ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営16 顧客のLTVを収益に変えるための手法とは
ショッピングセンター(SC)の開業時、「○○万人来場しました!」とSC事業者から誇らしげにリリースされるが「そこからどれほど収益を生んでいるのか」とやや批判的に見ている。
どんなに集客しようとその収入は出店したテナントの売上高/賃料に限られる。販促費という経費をかけ集客力を自慢するがそこから収益を生み出さない限り、SC収益は、人口減少社会においては衰退しか無く、どんなに多くの顧客が来場してもその収入をテナント料に依存している限り、結局、テナントの売上が上がらない限り収入は上がらない。今回、新型コロナウイルスを前にさらにその脆弱性が露呈したのである。
では、コロナ禍の今、海外からの集客も望めず、人口減少との2重苦の中、どのような方策が必要なのか。前号で指摘した来場者のLTV(顧客生涯価値)について解説したい。
2020年も減少したSC総数

2020年、SC総数は、2019年に続きさらに減少し3207カ所になった(図表1)。
コロナ禍によって開発延期も多く、恐らく2021年の開業数も減少も予想される。したがって残念ながら2018年がSC事業(産業)の歴史上のピークになるであろう。
この減少の理由は、「新規での増加―閉鎖等での減少」の差し引き合計がマイナスとなったことに起因する(図表2,3)。


SC事業の収入源
SCの収入源はテナントからの賃料収入である。テナントが賃貸区画(床)を賃借し、その使用及び収益の権利対価として賃料を支払う。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下、店舗休業を余儀なくされ「使用および収益」のうち、収益の権利行使が制限されたことによりテナント料の減免が行われた。そして、2回目の緊急事態宣言が発令され、飲食店の時短営業などからSCの売上は低下し、さらなる賃料低下が予想されている。まさに賃料だけを収入の柱とするSCビジネスが、非常事態において脆弱であることが明らかになったのである。このSCビジネスの脆弱性はかねてより指摘してきたことだが、この対処方法は、収入のマルチ化しか方法は無いのである。
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