間違いだらけのサステナブル経営 アパレル業界は「成長を望まない社会」の生活提案をすべきだ

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
Pocket

先日、あるテレビ局から「サステナブル経営」について取材を受けた。確かに、最近のアパレル業界は「サステナブル」一色で、それらをあえて包括すれば、リサイクルの素材を使って作りすぎを無くし、ゴミとなってでてきたものは再利用するという、食物連鎖の絵のようなものを紹介しているモノばかりである。本当にそれが「サステナブル経営」の本質なのだろうか?

アパレル業界実行すべきサステナブル経営とは如何なるものか?(venimo/ istock)
アパレル業界実行すべきサステナブル経営とは如何なるものか?(venimo/ istock)

「サステナブルだから売れる」という勘違い

 ある調査会社は「消費者はサステナブルなファッションを求めている」と言い、マーケティング的観点からサステナブル・ファッションを提唱している。また、あるメディアは、アパレル産業が生産時に排出する環境破壊の薬品、二酸化炭素などをやり玉にあげ、最後は、非人間的なアジアの労働環境に焦点をあて、人道的観点からサステナブルを推奨していた。

 これらに共通しているものは、その裏側に何ら哲学も世界観も見えないということだ。くずシルクやくずコットンでつくった服が売れるというなら、新宿や渋谷で女子達が買っている購買行動を見れば良い。「サステナブルだから売れる」というのは、そもそも日本語の意味が不明である。また、「作りすぎだ、けしからん」などと叫んでも問題解決にならないことは前号で伝えたとおりである。

 わらにもすがりたい産業崩壊寸前のアパレルに体の良いキーワードが現れただけだ。サステナブルとは、売るためのキーワードなのか、それとも、我々がアフターコロナの時代に生きてゆく「社会環境」のことなのか、はたまた産業活動全体として守るべき世界的とりきめなのか。アパレル業界は全く考えていないように見える。

 

早くも3刷!河合拓氏の新刊
「生き残るアパレル 死ぬアパレル」好評発売中!

アパレル、小売、企業再建に携わる人の新しい教科書!購入は下記リンクから。

1 2 3 4 5

記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態