実は脱レッドオーシャンの有力戦略、ディスカウンティング型スーパーへ転換する手法と手順
EDLPの価格戦略で「安い」イメージを浸透させる
ディスカウンティング型SMで重要なのは、決めた価格を維持することだ。短期の特価特売は行わない。EDLP(エブリデー・ロープライス)で「安い」というイメージを消費者に浸透させるのだ。特売日を設けるとその日以外は値上がりすると受け止められるから固定客が育ちにくい。EDLPならいつも同じものが同じ低価格で売られているから安心してその店を贔屓にできる。
今日では成人女性の75%が仕事を持っているのだから、特売日だからといって買物を優先するわけにはいかない。仕事の前後に定期的に買物するにはEDLPでなければならないのだ。欧米のSSMはディスカウンティング型でなくてもEDLPなのはその販売方法が時流に合っているからである。
もう1つ重要なのは、時間をかけて価格レンジ全体をさらに左寄せしていくことだ。低価格化に終わりはない。業界の最低価格に挑戦して欲しいが、すべてがそうである必要はない。しかし、とくに需要のあるベーシック商品だけは仕入れの努力で最低価格に設定したい。ただし、適切な粗利益率を確保できることが条件だ。そうでなければ継続できないからである。
取り扱う商品は幅広いお客にとっての高購買頻度品に限る。それゆえ、トータルの取扱品目数は少なくなる。SMの平均は1万品目を少し超えるくらいだが、ディスカウンティング型ならその半分ほどが目安だ。神戸物産(兵庫県/沼田博和社長)の「業務スーパー」は2400品目と発表しているように、少ない品目でもお客の基本的なニーズはカバーできるのだ。
売れ筋は1品大量陳列し、少し売れるものは少量陳列にして、死に筋は排除する。目標は販売量と陳列量を正比例させることである。すると品目ごとに陳列量は大幅に格差がつくはずだ。そうすれば売れ筋の分類ごとに、同時に補充作業を進められるから作業効率は一挙に高まる。
商品調達、物流システムの内製化が競争力の差に
売れ筋の1品大量陳列には商品調達方法の革新が前提になる。売れ筋は現在取引中の問屋に電話注文してもそれ以上は集まらないし、できたとしても人気商品ほど調達価格が高すぎて安売りはできない。だからディスカウンティング型SMには独自のソーシング活動による革新的な商品調達ルートの確保が不可欠だ。
一方で自社開発品を増やす。現状の売れ筋品目の品質はそのまま維持しながら、売価を下げるためだ。また、欠品を発生させず、安定的に数量を確保するためでもある。
そうした新たな活動のために商品部の人員を増やす。バイヤーを増やすだけでなく、商品部の機能を細分化した組織活動で目的を達成するのである。
具体的には、①最も効率のよい棚割りを追究するバイヤーと、②ストアブランドやプライベートブランド商品を開発するマーチャンダイザー、③有利な取引先を新規開拓するソーシングの専門家、④品質管理のエキスパート、⑤試用、試売の専任担当、⑥商品部内の事務作業を一手に引き受け、部下を使って効率よく目的を果たすオフィスマネジャーといったように、一連の業務を分担するのだ。商品部の機能を分業して専任化することで、今までより進化した商品部の活動が可能になる。
商品の販売単位は大型パックを増やす。安いとお客はまとめ買いをしたくなるので新たな販売方法を模索する。日本でも店を増やしている米国の会員制ホールセールクラブのコストコ・ホールセール(Costco Wholesale)の販売方法をモデルにして新たな販売単位を決めるのだ。
物流についても、問屋に頼らず独自のシステムを構築しなければならない。従来型のSMでもチェーン化するなら自前の物流システムが不可欠だが、ディスカウンティング型SMならなおさらだ。売れ筋の欠品回避のほか、作業システム改革ために、物流センターが不可欠となる。
この際気をつけたいのが、補充単位と陳列用の荷姿を連動させることだ。物流センターで効率の悪いピースピッキングをしたくないからだ。折りたたみ式コンテナではなく、すべて箱で納品できるようにする。もちろん発注単位も箱が最小単位でピースではない。
現在、積極的に物流センターへの投資を進める企業と、いまだに問屋の物流システムに乗っている企業で二極化しているが、勝つのは前者だ。理由は、物流センターは「店の業務・作業を肩代わりしてくれる場」ともいえるからだ。
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