あとがき ユニー“中興の祖” 家田美智雄さんに心酔、「家田ノート」がバイブル
ユニーの“中興の祖”の1人である故家田美智雄さんという流通業界最強のサラリーマン経営者を、連載・小売業サラリーマン太閤記として前回まで全6回で振り返った。今回はそのあとがき。筆者である私が家田さんからどのようなことを学んだのか、忘れられないエピソード、そして数奇な運命に身を委ねることになったユニーの現在に至るまでの歴史を振り返り、締めくくりとしたい。

バイブルとなった「家田ノート」
編集記者の仕事をしていると、ある特定の期間ごとに、大きく影響を受ける人物が必ず現れる。
所属する媒体や自分の立場によって、対象となる方はさまざまだが、入社して初めて心酔し、必死でその頭の中身を理解しようと努めたのが家田美智雄さんだった。
私の入社は1992年。家田さんのユニー社長就任が1993年――。まさに駆け出しの記者だった私にとって、亡父と同学年である家田さんのひと言ひと言は、千金に値すると言ってよく、今の私を育ててくれた恩人の1人、と本当に感謝している。
以前も書いたように、その語録である「家田ノート」は私のバイブルであり、困ったことがあれば、ページをめくり、「家田さんならどう考えるかな?」と思いを巡らすようになっていた。
幸運なことに、家田さんの後も多くの経営者の方々と直接会って話をうかがう機会に恵まれ、ずいぶんと学んだ。それらすべてのルーツは家田さんとの邂逅にあった。
新型コロナの自宅待機時に、「せっかくこれだけの資料があるのだから、一度まとめておこう」と思い立ち、記したのが今回の連載である。
書いているといろいろなことが思い出されて、さらに書き加える。初めは1万文字くらいで収めて形にしようと考えていたのだが、締めてみれば、その2.5倍に達していた。
ほとんど新たに取材をすることなくこのボリュームである。
さらに周辺から「会長 家田美智雄」の話を聞くことができれば、間違いなく1冊の単行本ができただろう。
そういえば…。書き残したエピソードが1つある。
稲沢の本部を訪ね、90~120分の取材後に、「お土産をあげるから」と先輩記者と私に持たせてくれたプレゼントについてだ。
箱の形から、ネクタイであることは明らかだった。
帰宅して中を開けてびっくり。ブランドは「エルメス」だった。当時でも上代(定価)で1本2万円くらいはしたのではないだろうか?
「なぜ、リストラ中の会社がこんな高価なものを…」とその時はわからなかったが、きっとバブル期の「アピタ」の残骸だったのだろうと後日想像がついた。
連載4回目でユニー社長に着任したばかりの家田さんが稲沢の配送センターにあった什器や備品を関連業者にただであげてしまったというエピソードを書いたが、「エルメス」もそれらと同じ扱いだったのだろう。
1997年、佐々木さんに禅譲し会長に就いた家田さんは、公の場にはほとんど姿を見せなくなった。話をうかがうチャンスもなくなり、やがて疎遠になっていった――。
これが、この長い話のエピローグだ。
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