#14コロナ禍で過去最高益達成!流通を川上からコントロールする北海道のチェーンストアの強さ

浜中淳(北海道新聞)
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際立つ!危機に先回りして対策を打つ「危機察知能力」

ニトリホールディングス全額出資の物流子会社として2010年に設立されたホームロジスティクスの札幌DC(札幌市手稲区)。恵まれぬ経営環境で生き抜いてきた北海道発のチェーンストアは危機対応にも敏感だ
ニトリホールディングス全額出資の物流子会社として2010年に設立されたホームロジスティクスの札幌DC(札幌市手稲区)。恵まれぬ経営環境で生き抜いてきた北海道発のチェーンストアは危機対応にも敏感だ

 こうした収益力の高さは、各社がサプライチェーンの構築に主体的に関与し、消費者の求める商品を滞りなく供給する仕組みを作り上げてきた成果と言えます。

 その最たる例が、製造から物流、販売までを自社グループで手がけるニトリHDでしょう。今回のコロナ禍では中国の供給網停止によって、多くの企業が商品調達で打撃を受けましたが、ニトリHDはベトナムなどに製造拠点を分散しており、主力商品の欠品をほぼ避けることができたのです。

 外出自粛で実店舗の売り上げは減ったものの、ネット通販の売上高を前年同期比で約40%も増やし、カバーした点も見逃せません。昨夏にタイミングよく受注用サーバーの処理能力を増強していたことに加え、ドライバーの人手不足対策として物流の自社化を早くから進めてきたことも奏効しました。

 危機に先回りして対策を打つ「危機察知能力」はニトリHDに限らず、北海道で急成長する小売業者が共通して備えている特質です。

 DCMHDの前身の一つ、ホーマック(現DCMホーマック)が80年代から90年代にかけ、ホームセンター業界の中でいち早く「ジャストインタイム」の商品供給システム(コンピューターによる単品管理で適正在庫を保ち、店で売れた分だけ商品センターから自動的に補充する仕組み)を構築していたことは、前回紹介しました。ニトリHDと同じく製造-物流-販売の一気通貫型ビジネスを展開するセコマの創業者、故赤尾昭彦氏は「専門業者の少ない北海道では、何でも自分で考えてやらざるを得ない」とその発想の原点を述べています(連載5回目参照)。

 経営環境が厳しく、外注に頼れない北海道の小売業者は、自力で高度な商品供給の仕組みを構築しなければ、成長は頭打ちになってしまいます。ただし、その仕組みを完成させることができれば、今度は無類の武器として競争力の源泉となる。北海道から全国レベルの小売企業が続出し、拓銀破綻やコロナ禍のような経済危機下でむしろ業績を伸ばすことができる大きな理由の一つです。

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