#2 ユニー“中興の祖” 家田美智雄さんの物語
チェーンストアは、カネさえ回れば絶対に有望な商売
大手問屋との取引をスタートさせると、衣料品店と食品店の商売はずいぶん異なることが分かった。
たとえば、それまでの西川屋は手形を切ったことがなかった。「ある時払いの催促なし」というユルい商売で、卸売店から10万円を請求されると、手元の現金のうち5万円を支払い、残りは手元に残していた。それで構わなかった。
一方、食品スーパーの商売では問屋から手形を切らされ、時間がくればしっかりと払わされる。
そこで、家田さんは、大手数社に取引問屋を絞って、集中仕入れをすることにした。期初に通年の取引金額を提示して握手する。そのうえで、手形を切って仕入れる。期日がきたら、手形を落とす――。
ところが西川屋の資金繰りは常に厳しく、いつも運転資金がショートしていた。けれども経理部長は、そんな商売をしたことがないから、知らぬ存ぜぬでまったく動いてはくれない。
それでは会社が潰れてしまうので、まだ30歳前の若造である家田さんが問屋に乗り込み、社長に手形のジャンプを直談判する――。
こんなことが繰り返され、何度も綱渡りの難局を乗り切っていった。
ある日、件【くだん】の大手問屋の社長に食事に誘われた。
「あんたのところは、手形のジャンプが多いけれども実際の財務内容を正直に教えてくれ」とトンカツをほおばりながら、しかしいつもにはない真剣な表情で詰められた。
家田さんは本心を吐露した。「もし私を信用してジャンプしたり、貸してくれるのであればやめてほしい。自分には損失を補てんするだけの財産はありません」。
言い終わると、ひとつ付け加えた。
「ただチェーンストアというのは、カネさえ回れば絶対に面白い商売です。だから、もしチェーンストアとして西川屋を認め、将来有望だと感じられるのであれば従来通りお願いしたい」。
その社長は「よし分かった。やってやる」と言い、本当の意味での両社の長い取引がスタートした。
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