#1 ユニー“中興の祖” 家田美智雄さんの物語
菓子以外はズブの素人が“食品の経験者”として、ユニーへ招聘
昭和35年(1960年)――。
西川屋(後のユニー)は衣料品の大型店舗を名古屋市熱田区六番町に開業した。だが業績は芳しくなく、不振を極めていた。
当時、営業部長を務めていた西川俊男さんは、ペガサスクラブを主催する渥美俊一氏(当時は読売新聞記者)に対策について相談した。
渥美氏からは、「食品スーパーを併設したらどうか」というアドバイスを受けた。「なるほど」と感心させられたけれども、長く西川屋の主力商品は衣料品であり、社内には経験者がいない。
西川さんは、懇意にしていた家田さんの従兄にそんなことを打ち明けた。
その時、従兄がひらめき、“食品の経験者”として推薦したのが家田さんだ。
そんな経緯を経て、1961年7月10日、家田さんは西川屋に入社した。
当時、西川屋の年商は5億円。老舗百貨店の丸栄(愛知県)が約30億円を売り上げていた時代だ。「自分のいるうちに30億円になるといいな」と淡い期待と秘めた情熱があった。
“食品の経験者”という触れ込みで入社した。だから即戦力としてすぐに結果を残さなければならない。しかし、悲しいかな、食品については菓子業界のことしか分からない。
「でも、(食品スーパーを)『知っている』ということで入ったから、『やらざるをえん』」かった。
そこで埼玉県川越市にあった食品スーパーに押しかけ、3日間にわたっていろいろ教えてもらった。
泥縄的な勉強ではあったが、1961年9月20日、何とか西川屋の食品スーパー1号店を名港店の3階に開店させた。
それまで食品は菓子などを中心に揃えていただけで日商は7万円ほど。それが食品スーパーとして開店させると30万円に跳ね上がった。
とはいうもののその時点で、家田さんは菓子以外の食品についてはズブの素人である事実は変わらなかった。
とにかく学ばなければいけない――。
多くの食品問屋の門戸を叩き、話を聞きまくった。
「呉服屋は所詮、呉服屋。食品やったって売れんよ」と厳しい言葉を浴びせられることもあった。
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