新業態「ヨークフーズ」と自社インフラの整備…セブン&アイが新会社ヨークのもとで描く「首都圏食品戦略」とは!?
4つの店舗フォーマットで首都圏の顧客のさまざまなニーズに対応
今後ヨークでは、ヨークフーズを軸に「標準型店舗」「小型店舗」「DS対抗型店舗」「プライス」の4つの店舗フォーマットを展開し、商圏特性に合わせてさまざまなニーズに対応する。この方針を打ち出す背景には、ヨークマートやイトーヨーカドー食品館で行ってきた実験店の成功例がある。たとえば「標準型店舗」に含まれる「ヨークマート小豆沢店」は、18年3月にイトーヨーカドー食品館から業態転換しており、新規MDの導入や地域性・鮮度感を意識した店舗づくりにより、18年4~12月の売上は対前年同期比141%を記録している。「セブン&アイとして成長を導くフォーマットが見えてきた」(セブン&アイ常務執行役員 グループ商品戦略本部長 首都圏 SM 戦略準備室 石橋誠一郎氏)。
売場面積500~600坪程度の「標準型店舗」では、旧ヨークマート店舗を踏まえ新規MDを導入し、デリカ強化を図る。同150~300坪の「小型店舗」ではイトーヨーカドー食品館のオペレーションを生かし、省人化やアウトソーシングで生産性向上をめざす。
「DS対抗型店舗」は、価格訴求型の競合が多い地域に立地する店舗で、ザ・プライスの販促物や什器を一部導入し、購入頻度の多い商品の価格訴求やお買い得品の打ち出しを強化する。「プライス」は現状のザ・プライスのMDを継続し、独自仕入れで低価格を訴求しつつ、低コストの店舗運営スタイルを追求する。
食品事業を支えるインフラの整備が必要
石橋氏は、首都圏食品事業の成長には、セントラルキッチンやプロセスセンター(PC)といった自社インフラの整備も必要だと話す。同じセブン&アイ傘下のヨークベニマル(福島県/真船幸夫社長)は総菜の製造を主な事業とするライフフーズ(福島県/松崎久美社長)を子会社に持ち、20年度の営業利益率はライフフーズを含み3.8%、ライフフーズを除いても2.9%と、ヨークマートの0.4%と比較すると非常に高い。この要因を石橋氏は「製販一体のMD・デリカ製造のインフラを持ち、サプライチェーンのキーポイントを自社で管理しているため」だと分析する。そのため、セブン&アイでは3年以内に首都圏食品事業を支えるセントラルキッチンやPCといった自社インフラの整備を完了させたいとのことだ。
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ヨークはこの組織再編により、売上高2000億円(目標到達年度は未定)をめざし、新規出店は年間3店舗ほどを予定しているという。ついに明らかになったセブン&アイの首都圏食品戦略。ひとまずは新業態であるヨークフーズの動向を注視しておく必要があるだろう。