第96回 ショッピングセンターの売上がいま“なぜか”好調な理由とは

西山 貴仁 (株式会社SC&パートナーズ代表取締役)
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3業態(ショッピングセンター、百貨店、チェーンストア)の2023年売上高が出揃った。結果、全ての業態で前年を超えたが、これはコロナ禍の反動であり、素直に喜べるものではない。むしろ危機感さえ覚える。その理由は、あれだけ苦しんだコロナ禍が結果、追い風に転じたことで復調に寄与していると思うからに他ならない。今号ではその仮説について提示したい。

Interior of a Mall in Singapore

2023年の売上高実績

 業界団体の発表数字は下記の通り、全業態で前年を超えている。

1  2023年売上高(対2022年比)

業態

2022年

2023年

前年対比

SC

28兆8970億円

30兆8260億円

106.68%

百貨店

4兆9812億円

5兆4211億円

108.83%

チェーンストア

13兆2656億円

13兆5585億円

102.21%

 これをコロナ禍前の2019年比で見るとSCと百貨店はコロナ禍前には戻っておらず、チェーンストアだけはコロナ禍を経て大きく売上げを伸している。

2  2023年売上高(対2019年比)

業態

2019年

2023年

対2019年比

SC

31兆9694億円

30兆8260億円

96.42%

百貨店

5兆7547億円

5兆4211億円

94.20%

チェーンストア

12兆4324億円

13兆5585億円

109.06%

コロナ禍の影響と復調

 この現象は、消費行動の変化を表す。「不要不急はお控え下さい」と生活や行動を制限され日用品の購買行動が中心となり、結果、①日常性を重視した生活スタイルになったこと、②「不要不急」と言われる消費行動の制限がそのまま生活態度として浸透したこと、この2つが挙げられる。

 また、2023年の好調要因には以下の5点が挙げられる。

  1. コロナ禍により前年の売上高の低迷
  2. コロナ禍による閉店や規模縮小からの復調
  3. リベンジ消費が含まれること
  4. 物価の高騰と高額品が売れたこと
  5. 円安によるインバウンド消費の伸長

 百貨店の復調が大きいことがその証左である (図1)

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記事執筆者

西山 貴仁 / 株式会社SC&パートナーズ 代表取締役

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。201511月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒

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