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ソフトバンク、ヤフーの新流通革命1 ZOZOに続き、LINEも ソフトバンク震源の流通大再編 ECがリアル店舗を飲み込むか?

「ソフトバンク、ヤフーの新流通革命」オンライン特別編集版、第1回。流通業界において、ソフトバンクグループ(東京都:以下、SBG)の孫正義会長兼社長を頂点とする“ソフトバンク陣営”の存在感が大きくなってきている。リアル店舗決済への巨額の投資に、ZOZOの子会社化、そしてLINEとの統合というように、多額の資金を流通ビジネスに投じている(第2回は12月2日公開)。

1年あまりで
決済の覇権を握る!

 通信キャリアとしての枠を超え、近年は投資会社としての側面を強くするSBG。グループ内の資本関係は複雑であるうえ、傘下企業および出資先の業界業種は多岐にわたることもあって、企業連合としてのSBGの全容を把握するのは簡単ではない。流通に関係する、最近の主な動きを見てみよう。

 まず動いたのが、モバイル決済のPayPay(東京都/中山一郎社長)だ。ヤフーとソフトバンク(東京都/宮内謙社長)との合弁で設立された同社は1810月、社名と同名の決済サービス「PayPay」をスタートした。

 「LINEPay」「楽天ペイ」が先行し、「d払い」「merpay」など新規プレイヤーも続々と参入する中、後発のPayPayは、「100億円キャンペーン」など、グループの資本力をフルに生かした大胆なポイント還元策でユーザーを一気に獲得した。

 加盟店開拓に際しては、かつて「Yahoo!BB」を一気に普及させた、“伝説の営業部隊”を率いた馬場一氏をCOOとして営業統括の責任者に起用。競合他社の多くが加盟店開拓をサードパーティに任せる中、自前の人的リソースを大量投入することで利用可能カ所数を爆発的に増やしていく。

 こうして、PayPayの登録ユーザー数は19年11月時点で2000万人まで増加。利用可能カ所は170万を超え、コンビニエンスストアやドラッグストア、そして食品スーパーの店頭のみならず、場末の中華料理店や美容室でも「PayPay」のロゴを見ることは珍しくなくなった。サービス開始から約1年で、PayPayは決済の覇権を握ってしまったのだ。

ZOZO買収で
国内ナンバーワンEC

 続いて動きを見せたのが、ソフトバンク子会社のZホールディングス(東京都/川邊健太郎社長:19年10月に旧ヤフーが持株会社制移行に伴い商号変更)だ。

 新設された事業会社・ヤフー(同)のほか、オフィス用品・日用品ECのアスクル(東京都/吉岡晃社長)などを傘下に持つ同社。ビッグニュースが飛び込んできたのは19年9月のことだ。Zホールディングス(発表時はヤフー)がZOZO(千葉県/澤田宏太郎社長)をTOB(株式公開買い付け)により買収すると発表。2カ月後の191113日付けでTOBが完了し、ZホールディングスがZOZO株式の50.1%を取得、連結子会社化している。

 「国内ECナンバーワンが射程圏内に入った」

 買収を発表した記者会見で、Zホールディングスの川邊社長が発したコメントだ。1999年に自社ECYahoo!ショッピング」をスタートしたヤフーだが、同時期にサービスを開始し急拡大していったアマゾン、楽天(東京都/三木谷浩史会長兼社長)の背中は遠く、13年に出店手数料無料などを打ち出すことで巻き返しを図ろうとしたものの、現在も後塵を拝している状況だ。

 ヤフーとしては、ファッションECにおいて圧倒的な強みをもつZOZOを買収して一気にEC事業を拡大。「2020年台前半まで」(川邊社長)に自社ECプラットフォームを国内ECナンバーワンに成長させたい考えだ。

 こうした戦略のもと、Zホールディングスは19年10月、モール型ECの「PayPayモール」、フリマアプリの「PayPayフリマ」と「PayPay」の名を冠した新サービスを開始している。「一人勝ち状態」(ソフトバンク宮内謙社長)となったPayPayとの相乗効果により、ECでも覇権掌握をめざす構えだ。

 こうした“流通戦略”の先に、孫正義氏が見据えているものとは何か。明日12月2日に公開する後編で明らかにしよう。

※『ダイヤモンド・チェーンストア』誌12月1日号特集から一部コンテンツ抜粋の上、加筆・再編集したものです