#7 北海道のスーパー「3極寡占化」がもたらした「新北海道価格」のご利益
3極だけに取引の好条件が出るようになる
横山氏は03年の「チェーンストア・エイジ」(現「ダイヤモンド・チェーンストア」)のインタビューで、北海道市場における食品スーパーの「クリティカルマス(そのサービスが爆発的に普及する最小限の年間売上高)は2000億円」と述べていました。
2000億円台でもリージョナルチェーンとしては取引先に大きな影響力を持ち得る規模ですが、今やそれを大きく超える3000億円台のボリュームを持つグループが3つ並び立っているのです。各グループが互いにけん制しながら、取引先と条件交渉するわけですから、価格は当然下がっていく。
メーカーやベンダーなど取引先サイドにとっても、広大で非効率な北海道全体をカバーするぐらいなら、3大グループをかなり優遇してでも、市場の8割を押さえた方が得策ということになります。
3大グループはいずれも道内の営業拠点と物流拠点を札幌圏に置き、全道の店舗に配送する仕組みを持っているため、各メーカーやベンダーは地方都市に人材や配送設備を張り付けておく必要がなくなり、札幌に経営資源を集約できるメリットもあります。実際、この10年の間にメーカーやベンダーが、札幌以外の支店機能や物流機能を縮小・撤退させる一方、札幌圏の物流施設を高度化する動きが急速に進みました。
こうなると3大グループにだけ好条件が出て、その他の勢力には出ない。その他勢力は3大グループの傘下に入るか、廃業する以外に選択肢がなくなり、「3極寡占化」がさらに進む。これが21世紀に入ってからの北海道市場の構図です。
チェーンストア理論を日本に紹介した渥美俊一氏は著書「チェーンストア経営の目的と現状」(実務教育出版)にこう記しています。
<寡占化とは、少数の企業が購買力の大半を吸収する状況をいい、その他の大多数の企業が一挙に経営効率を悪化させていく状態でもある。消費者利益優先の立場からみれば、競争による当然の成行きであり、こうした競争が激しいほど大衆の消費生活はよくなるわけである>
3大グループの合計店舗数は500を超え、道内全域を網羅しています。地方で生活していても、札幌の店とほとんど同じ商品を、同じ価格で買えるのですから、道民の消費生活は確かに向上したと言えるでしょう。
このように北海道の消費者に多大なご利益をもたらしたスーパーマーケットの寡占化はどのようにして起きたのでしょうか。次回はそこに焦点を当てたいと思います。
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