三陽商会「大江改革」の実態 繰り返す縮小均衡と連続赤字の先にある希望とは
もし、バーバリー問題が一年遅かったら三陽商会には明るい未来もあった
一般的にコンサルタント会社ではプロジェクトを進める際、パートナーやマネジャーといったシニア人材は最初と最後に出張ってくるだけで、残りの多くは若手のコンサルタントが担当する。それゆえ、的外れな分析が繰り返されることも珍しくない。
しかし、相手は百戦錬磨の杉浦氏である。しかも、私を指名してきてくれたのだ。
私は、自分の仕事を放り出し、同社の戦略策定に集中した。
様々な分析を行って、そこから得られたデータを見ながら、全く新しい、そして斬新な戦略をつくり役員会でプレゼンし、杉浦氏に絶賛された。
バーバリーとのライセンス契約が打ち切られることがわかったのは、その後だった。
同社の売上の半分近くを占めるバーバリー事業を失う非常事態に、いつしか私の戦略は後回しとなり、その後消えてしまった。また、時を同じくして、私も大病を患い病院に担ぎ込まれ、プロジェクトから外れてしまった。
もし、バーバリー事件がなかったら、いや一年遅かったら…
きっと三陽商会が橋頭堡となり、百貨店とアパレル企業の新しい関係性が構築され、今のような百貨店不況にはなっていなかったように思う。当時、社長に昇格していた岩田氏はこう言った。「バーバリーが日本でつくったブランドは偉大だった。一朝一夕にできるものではない」と。
そんなことは同社の誰もが分かっていたはずだ。それでも、後継ブランドだとして「マッキントッシュロンドン」を強気に推さざるを得なかったのは、「上場企業という十字架」を背負っていたからだと思う。
私は、「これだけの大改革をやるのなら、非公開化も含めて検討してはどうか」と進言した。だが当時、すでに現場から外れてしまっていた私の声は届かなかった。
その後、三陽商会は凋落の一途を辿る。
2020 年4月、同社に約6%出資する米投資ファンド・RMBキャピタルが当時の中山雅之社長ら現経営陣の総退陣と小森哲郎(カネボウ元社長)氏らプロ経営者の登用を提案。プロキシーファイト(株主同士が持ち株数で争う)にまで発展するのではないかという、まさに一触即発の状態となった。
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