中間決算は衣料・住関連が回復も低落トレンドは継続……GMS復活の道筋は?
GMS低落トレンドは変わらず……
GMSはこの上半期に衣料・住関連が回復し一定の需要を取り込んだ。だが長年にわたり地盤沈下が続いてきたのが衣料・住関連。回復したとはいえ、コロナ前の水準には戻っておらず、低落トレンドが変わったわけではない。
GMS勃興期の1960年代、各社は取扱商品を拡張し店舗を大型化するとともに出店を強化していった。百貨店以外では中小・零細の一般商店が多くを占めていた小売業界にあって、経済成長期の拡大する消費を取り込むことに成功しシェアを高めていった。
GMSは衣食住の生活必需品を低価格で提供することで成長したが、1980年頃を境に成長鈍化が始まった。1970年前後からは専門店やコンビニエンスストアなど新しい業態が登場していたし、1974年の大規模小売店舗法(大店法)施行による大型店の出店規制で拡大にブレーキがかかった。1990年代に入ると、専門店が台頭し、衣食住の消費需要を幅広く取り込むことが難しくなり、GMSの後退という流れが加速した。
自営売場縮小とテナント化の成果は
低迷の要因とされてきた衣料・住関連分野では、専門店化やプライベートブランド(PB)化を試みてきたが多くが成果を出せなかった。
衣料・住関連の売上低下に伴い食品の割合が高まってきたが、広域商圏から集客するGMSという大型店舗で食品に特化し収益を改善するのは難しい。
今、各社が重点的に取り組むのが衣料・住関連の売場面積適正化、すなわち自営売場縮小とテナント化だ。これにより採算性を改善するのがねらいだ。
イトーヨーカ堂は商業施設としての価値向上を図ろうと有力テナントを導入し、ショッピングセンター(SC)全体の客数増加につなげている。
イズミは直営ライフスタイル売場において、衣料専門店と組んで新ブランドを立ち上げたり、提携するフランチャイズの店舗を増やしたりして新規顧客層の取り込みを図っている。
平和堂は数年来、既存店改装を計画的に進めており、衣食住の直営売場にとどまらず、テナントを含めた館全体の活性化に取り組む。
各社の改革は途上にあるが、課題も浮上している。
イトーヨーカ堂ではテナント導入によるSC化で客数は増えているが、逆に営業総利益率の低下を招いているという。
各社はSCとして運営する方向へ軸足を移しつつある。改革を仕上げGMS復活に向けたスタートラインに立てるのか。
ワンストップショッピングという利便性を求めるニーズがなくならないとすれば、それに最適なマーチャンダイジングを組み立てたうえで、直営売場とテナントの組み合わせを再構築する運営力が求められることになる。
GMS復活宣言 の新着記事
-
2022/12/14
中間決算は衣料・住関連が回復も低落トレンドは継続……GMS復活の道筋は? -
2022/11/14
近年は店舗改装、SMシフトに注力……平和堂が打つ再成長に向けた布石 -
2022/10/24
優良GMSのイズミ、逆風下の再成長戦略の中身は -
2022/10/10
経営統合で業容急拡大のイオン北海道、北海道食品小売シェアトップへの道筋 -
2022/09/22
株主から再度“切り離し”迫られるイトーヨーカ堂、矢継ぎ早に進める事業構造改革の現在地 -
2022/09/02
連載・GMS復活宣言 #1「総合」にこだわるイオンリテールのゆくえ
この連載の一覧はこちら [6記事]
関連記事ランキング
- 2024-12-12「オーケー」後の関西 イオンリテールがねらう都市型SCそよらで脱同質化
- 2024-12-07イオン九州中川伊正社長が語る3年で売上6200億円超めざす成長戦略
- 2021-02-22イオン、クスリのアオキHDの株式9.98%を取得、ダイエーの退職給付信託から
- 2024-09-25市場規模拡大、寡占化進行!小売業12業態、最新市場規模&占有率2024
- 2024-11-22業態別 主要店舗月次実績=2024年10月度
- 2023-12-01GMS復活へ イオンリテールアパレル改革「専門店モデル」の全貌
- 2024-04-09業態超え大型再編続々の小売業界を読み解く!流通相関図2024!
- 2021-07-30大小2タイプのプロセスセンターを使い分ける!イオン九州の差別化戦略とは
- 2022-01-27大型センター建設でセンター出荷型ネットスーパーを強化するイトーヨーカドーの戦略とは
- 2024-09-265兆円台に回復!縮小続いたGMSの市場規模&市場占有率2024