業績絶好調のZOZO、BtoB事業からのユナイテッドアローズ離脱の影響は?

棚橋 慶次
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ZOZOTOWNの好調を支えるのは……

 商品取扱高全体の7割以上を占める主力のZOZOTOWNは、アパレルを軸とする日本最大級の通販サイトであり、1500超のショップ、8000超のブランドが90万点以上のアイテムを出品している。

 ZOZOTOWNでは買取・製造販売や中古販売も取り扱っているが、最もウエートが高いのは受託販売である。受託販売は、ショップの商品を預かり、ECにかかわる業務全般を引き受ける。ただし、在庫リスクは委託者責任だ。

 ECのデメリットは「すぐ商品が手に入らない」ことであり、少しでもリアル店舗とのギャップを埋めるためには、物流・供給機能の強化が欠かせない。とはいうものの、アパレル業者が自前で物流インフラ確保するのは難しい。

 ZOZOの強みは、物流拠点「ZOZOBASE」にある。ZOZOBASEは千葉に5つ、茨城に3つの物流センターを抱え、さらに増設を計画している。これらにより、ZOZOTOWNは迅速な配送を可能としている。

 物流センターはただの倉庫ではない。商品の入出庫・保管・ピッキング・受発注管理・配送手配・返品入帳・欠品防止など「フルフィルメント」とよばれる一連のサービスは、ハコモノをつくったからといってすぐにこなせるわけではないのだ。ZOZOBASEが提供する高品質のフルフィルメントサービスは顧客企業の高い支持を集めている。

 しかも、「習熟曲線」といって、フルフィルメントサービスの単位あたりコストは日々のノウハウ蓄積や地道な業務改善の積み重ねを通じて下がっていく。売上予測1つをとってみても、精度を向上させるにはある程度の経験がものをいう。

 ZOZOBSAEは物流センターにおける業務を通じて生産性・収益性を高めている。顧客の利便性も高まるわけで、競合他社が追随するのは容易でない。

 なおZOZOTOWNに出品している一部アパレル業者は、フルフィルメント業務に加え自社通販サイトの運営(開発・運用)をZOZOに委託している。こちらのビジネスはBtoB事業を構成しており、商品取扱高全体に占める比率は概ね各四半期5%前後だ。

 このほか、親会社であるZホールディングス(東京都/川邊健太郎社長Co-CEO)傘下のヤフー(東京都/小澤隆生社長)が運営する「PayPayモール」にもZOZOTOWNは出店しており、ZOZOではこれをPayPayモール事業にセグメントしている。ZOZOTOWN事業がアパレルを中心としているのに対し、PayPayモール事業は他カテゴリーもターゲットとしている。

 余談だが、22年3月期第1四半期決算発表より始まった「漫画スライド」は、今回が最後のようだ。澤田社長みずからが「栗太郎」として業績などを解説し、創業者の前澤友作氏も登場するなど巷の注目を集めていただけに、少し寂しい気がする。

23年3月期増収増益予想も
気になるユナイテッドアローズの「穴」

 さてZOZOでは2023年3月期の業績予想で、売上高が対前期比9.1%増の1813億円、営業利益が同3.7%増の515億円と、引き続き、売上高および営業利益の過去最高更新をめざす。ただし、いずれも1ケタ台の伸びでやや控えめの数値だ。投資家も失望したのか、決算発表翌日から株価は寄り付きから大きく下落、そのまま戻らなかった。

 気になるのは、BtoB事業において同40.0%減の大幅減収を見込むという点だ。BtoB事業が全体に占める割合は小さいが、この減収が事業に与える影響は大きい。

 この理由は、大口顧客であるユナイテッドアローズ(東京都/松崎善則社長CEO)がこれまでZOZOに委託していた自社サイトの開発・運用を含めた通販サービスのフルフィルメントを、自主運営に切り替えたためだ。今のところ、ユナイテッドアローズの穴を埋める新規顧客は見つかっていない。

 ユナイテッドアローズが運用変更に踏み切ったのは、リアル店舗と連動したOMO(店舗とECの融合)施策を進めることに加え、手数料にもありそうだ。ZOZOの手数料は、取扱高に比例して課金される変動制の体系をとる。ECのウエートが急速に伸びていたアローズにとってこうしたコストを一部固定化することでコスト削減を進める狙いがある。

 実は本丸の受託販売も、BtoB事業と同じ料金体系だ。アパレル企業が自前でECサービスを回すのは極めて難易度が高いのが実情だが、ユナイテッドアローズの離脱が「蟻の一穴」とならないか、今後を注視したい。

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