物流はいまだ食品小売の「暗黒大陸」 経営戦略に組み込み変革する方法とは

雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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経営課題を見つめ直し、物流を設計する

 では、どのような手順で物流革新を進めていくべきか。

 まずは、自社の経営課題をあらためて見つめ直すことから始めたい。それを踏まえて、物流領域で何を解決したいのか、顧客に対してどのような価値を提供したいのかを明確にすることが重要になる。

 そのうえで必要になるのが、強固な物流体制を構築するための組織づくりだ。長年、オギノ(山梨県)で物流戦略に携わり、現在は物流アドバイザーとして活躍する野田勝氏は、「物流変革を成し遂げるためには部門を超えた連携と戦略が必要だ」と唱え、「物流部門を社長直轄にするなど経営トップに近いところに置き、各部門とコミュニケーションをとりながら自社の物流を“企画する”人材を育成することが重要」と提言する。食品小売業はそのビジネスモデルの特徴ゆえに、縦割り型の組織体制であることが多い。しかしそこに横ぐしを刺さなければ、物流の最適化・変革は難しいのだ。

 次の手順としては、物流に対する投資判断を正確に行うことだ。前提として押さえておきたいのは、物流投資では部分最適ではなくサプライチェーン全体を最適化するという発想を持つことだ。

 ローソンやニトリ傘下の物流企業ホームロジスティクスなどで要職を歴任した松浦学氏は「(ネットスーパーの需要増など)顧客の買い方が変わった以上、マーケティングの手法や商品の生産方法を含め、小売が主体となってサプライチェーンの最適化を考えなければならない」と指摘する。

 ここまでをまとめると、自社の経営課題と戦略、顧客に提供すべき価値を明確にし、経営トップが旗振り役となりながら物流部門と他部門が相互に連携するような体制をつくり、前者でサプライチェーン全体の最適化をめざして行動するということが、物流変革への最短ルートということになる。

 言い方を変えると、物流戦略は各企業の経営課題によって方向性は大きく変わるはずで、それゆえに正解というものは存在しない。自社の置かれた状況を適切に判断しながら、物流を戦略的に「考える」という作業が求められるのだ。

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記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2015年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。

企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)済み。

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