ニトリの“大都市シフト”

2015/07/01 00:00
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 家具とホームファッション専門店のニトリホールディングス(北海道/似鳥昭雄社長)の“大都市シフト”が進んでいる。

 

 同社は、現在国内に358店舗を展開。その内訳は、大型店の「ニトリ」が325店舗、小型店の「デコホーム」が33店舗。従来は、「ニトリ」による郊外出店を優先させてきたが、地方都市の少子高齢化と自社店舗飽和によって、国内市場の「ニトリ」の出店余地は、それほど多くはない。

 

 そこで、数年前から小商圏に目をつけ、「デコホーム」の可能性を実験してきた。

「今の空白地帯は都心部だ。実はインターネットの販売でも東京都の売上高構成比率は5割に近い数字を計上している。都心部には、我々のような商品を手ごろな価格で買える場所が少なかったのだろう。東京都、大阪府、名古屋市、福岡市を含め、クルマの保有比率が低く、郊外のニトリに行く足を持たないお客さまにリーチしたい」(似鳥社長)。

 

 2014年10月29日、東京都吉祥寺に「デコホームヨドバシ吉祥寺店」出店したところ好調だった。

 これを受け、2015年2月6日には、山手線の内側に初出店となる「デコホーム池袋サンシャインシティ店」を開業。若者を中心に客層が拡大している。また、3月20日には「デコホーム 浅草ロックス・3G店」、5月29日には「デコホーム亀有駅前店」をオープンした。

 

「都心店舗は郊外店舗に比べて、出店コストは高くなるが、1坪当たり売上高は全店平均を大きく上回る。全国的に大都市への人口集中が進んでいることを踏まえて、都心部の出店には一段と力を入れたい。また都心部への出店により、ブランドイメージを引き上げていきたい」(似鳥社長)。

 

 4月24日には、東京都中央区銀座の「プランタン銀座」内に「ニトリプランタン銀座店」(以下、銀座店)を開業した。

 ニトリグループとして初めての百貨店内の出店。店内はコーディネートを意識し、従来の「ニトリ」の品揃えの中からファッショナブルなアイテムを厳選し、プレゼンテーション重視の売場を展開している。

「ニトリ」の標準店舗は2000坪。銀座店は450坪とその4分の1の広さ。2000坪の中からピックアップしてモダンで銀座に似つかわしいデザインや従来よりも明るくカラフルな色味を選定し、コーディネートできる品揃えを意識した。

 また、従来は2m20cmの高さだった什器を1m50cmにして、奥行きが見えるように見通しを良くした。

 主要顧客は20代~35歳までの働く女性。極端な低価格帯をカットして、中価格帯の商品を提案している。

「ニトリの店だがニトリのような感じがしない新しい店になった。売上や利益を意識しない。銀座のお客さまに『おしゃれなお店』と評してもらいたい。新しい顧客層を拡大したい」(似鳥社長)。

 

 さらに6月19日には大阪市内に「ニトリ心斎橋アメリカ村店」を出店した。

「オープン後、店を見に行った。10~20代が中心で30代はいなかった。買い物をする雰囲気ではなかったが人だけはたくさんいて、売れるかなと疑問も抱いたが、今のところは売上も順調だ。何が売れて何が売れないかの実験。商品を入れ替えながら今後の新しい形を模索したい」(似鳥社長)。

 

 ニトリの“大都市シフト”はさらに加速し、今後、世田谷区、足立区、江戸川区、大田区に大型店舗を出店する計画だ。現在、東京都内には21店舗を展開するが、23区内にはあと20店舗はオープンさせるという。
 

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