ファーストリテイリング 2015年度上期決算発表会実況中継(下)

2015/04/12 00:00
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 昨日の続きです。

 さて、ファーストリテイリングの中期目標を確認すると、売上高5兆円、営業利益1兆円の世界ナンバーワンブランドになることだ。17年8月期には売上高2兆5000億円をめざしている。

 

 今後の成長戦略は、次の5つの骨子からなる。

 

(1) 日本のグローバルヘッドクオーターが全世界の事業をダイレクトに経営、「グローバルワン・全員経営」を実践

 

 全員が経営に参加できる仕組みをつくる。日本を真のグローバルヘッドクオーターにして、日本やグレーターチャイナ、韓国でユニクロが成功している要因を全世界・全ブランドに応用する。また、グローバルシニアマネージメントチームが世界中のユニクロ、全ブランドの水準を上げ、ビジネスの基準を全世界で統一させる。同時に全従業員が経営者マインドを持って各事業を経営する。

 

(2) 海外ユニクロの高い成長を継続し、ユニクロを世界中の市場でナンバーワンブランドにする

 

 我々の最終的な目標は、進出したそれぞれの市場でナンバーワンになることにある。ユニクロの現状を言うなら、日本、グレーターチャイナ、韓国において売上、利益、ブランド力でナンバーワンになった。東南アジアや米国、欧州、オーストラリアでも存在感は確実に高まってきている。

 現在、日本の842店舗に対してグレーターチャイナには415店舗、韓国には139店舗あり、この両国の成長が業績を牽引している。グレーターチャイナの売上は2015年8月期に3000億円に迫る勢いで、5年後を目安に1000店舗を達成させ、最終的には3000店舗を展開したい。韓国の売上は同1000億円に近づき、アパレル市場ではナンバーワンブランドになった。

 もうひとつは、東南アジアとオセアニアでの成長だ。現在、フィリピンに22店舗、インドネシア6店舗、シンガポール22店舗、マレーシア24店舗、タイ21店舗、オーストラリアには4店舗を展開している。

 ここでは年間50店舗の出店を計画する。とくにオーストラリアでの出店を加速させたい。季節が異なる各国で競争力がある商品を拡大している。

 現在39店舗を展開する北米は出店加速によって、ユニクロの存在感が高まっている。2015年秋にシカゴに旗艦店をオープン、またデンバー、シアトルにも進出。2016年春にワシントンDC、同秋にはカナダに進出する予定で新エリアの開拓に努める。2015年も年間20~30店舗の出店を継続させる。米国は世界一の市場であり、最優先で全社を挙げて事業サポートすることによって3年後に売上高1000億円、営業利益100億円をめざす。

 欧州は現在ロシアに5店舗、ドイツに1店舗、フランスに8店舗、英国に10店舗を展開している。主要都市に出店を加速させる。2015年秋にはベルギーのアントワープに1号店を出店する。さらにロンドンの旗艦店「オックスフォード311」を大幅拡張し全面改装する。

 ユニクロの店舗数は、2015年秋に海外の店舗数が日本の店舗数をいよいよ超える。

 

 ユニクロブランドの評価も高くなっており、インターブランド社の「Japan’s Best Global / Domestic Brands 2015(日本のグローバルブランド)」でユニクロは全業種の中で7位。中国でもイノベーティブ・マーケティング・サミットでユニクロのデジタル広告が金賞を受賞(2014年12月)。また、デジタルマーケティング&リサーチ社L2ThinkTank(米国)が「Digital IQ Index®2015年ランキング」(2015年4月)を発表しているがユニクロは日本で1位、韓国で3位だった。

 

(3) 個店経営への転換を進める

 

 いままでユニクロと言えば、チェーンストア経営であった。今後の日本は市場が縮小し、大きな発展が見込めない。そうした状況を勘案すると個店経営に徹しないといけないと考える。

 もともと小売業は、その地域に密着して地域とともに共存するもの。だから、経営者マインドを持った全社員が地域密着型の店舗経営に当たる。そして、地域のお客さまに愛される店舗になる。店舗スタッフと店長が地域に根差した店舗へ進化することで売上利益を最大化させたい。

 この3月27日に開業した世界最大ワンフロアの「札幌エスタ店」は地域密着型の商売の良い例である。オープン前に札幌市内で配布したリーフレットには近隣の店舗や飲食店を紹介。また北海道限定のTVCMを放映するなど地元のお客さまや街に溶け込むマーケティングを実践している。その地域の人々とともに栄えていきたい。

 また子供が多いという地域特性に対応して、子供売場は充実させた。ベビーカーも一緒に入ることができるキッズ専用試着室を設置したり、カラフルな売場を具現化した。

 このように地域のお客さまニーズにきめ細かく対応した販売計画、在庫水準の売場を店舗経営に精通した店長とスタッフが判断して作り上げていく。

 

(4) 世界最高水準のサプライチェーンをつくる

 

 我々は、企画→生産→マーケティング→物流販売という流れでサプライチェーンを構築している。

 そのうちの企画については、世界最高水準の商品開発を行いたいと考えている。従来の東京、ニューヨーク、上海に加え、パリ、ロンドン、ロサンゼルスにも本格的なR&D(リサーチ&デベロップメント)センターを設立する。

 生産は、グローバルで最適なネットワークを構築する。そして追加生産のリードタイムを大幅に短縮したい。

 マーケティングは、グローバルに各エリアと連動させる。グローバル旗艦店を世界の主要都市に出店し、お客さまとそれぞれのブランド間、経営者と従業員間、サプライヤーと我々間…という具合にあらゆる関係がダイレクトに会話できる双方向でデジタルコミュニケーションを図りながら、マーケティング実践し商品開発に当たる。

 物流と販売に関しては、「有明プロジェクト」において首都圏最大の配送センターを設置する。これは単なる配送センターではなく、世界最大のデジタルフラッグシップストアになる。これは、店舗、パソコン、モバイルを連動させた物流・販売システムが後ろ盾になる。全世界でも同じような仕組みを展開していく。

 現在は、デジタルがすべてのビジネスに影響を及ぼす時代だ。あらゆる情報がポケットにある。バーチャルとリアルは、共存共栄だ。お互いが必要だと思う。

 もうひとつはグローバル化で世界中の情報がはいってくる超情報化時代だ。その中でローカルも重要になる。

 当然、モノのあり方や買い方、流通の仕方は変わってくる。

 今のような対立する概念をシームレスで結ぶ産業をつくりたい。それが我々の課題だ。

 

 我々は、サプライチェーンを進化させ、今までのアパレル・ファッション産業や小売業とは全く違う「新しい産業」をつくる。

 

(5) GUとその他グローバルブランド事業の改革とさらなる発展

 

 GUは上期に増益に転換し、中期的には売上高3000億円、営業利益300億円をめざす。「ファッションと低価格」のブランドとして、日本市場で確固たるポジションを確立したと考える。今は、上海と台湾を中心に海外展開を進めているところだ。それぞれの市場で「ファッションと低価格」ではナンバーワンになりたい。

 グローバルブランド事業のアフォータブルラグジュアリーブランドは、各ブランドのDNAを活かしながら、ファーストリテイリングやユニクロ事業のプラットフォームと事業プロセスを使い、各ブランドを最短で10億ドルのビジネスに育成する。

 

 さて、次期経営者についてよく聞かれるが、企業は、創業者や創業者マインドを持った人間がいない限り発展しない。

 誰かがいいアイデアを思いついて、市場があり、そこに人、モノ、カネが集まってスタートするのが事業の原点だと思う。

 その中心になる創業者がいない限り、うまくいかない。 

 私もそうだが、人間は老いる。

 そこでこの次に誰につなぐかと言えば、創業者マインドを持った人間になる。

 私の場合だと創業者であり、会長であり、CEO(最高経営責任者)であり、株式もたくさんもっている。

 私だから、こういうスタイルでできるのであって、次の経営者候補に言っているのは、絶対に私の経営スタイルを継ぐなということだ。

 やはりチームで会社が発展してみんなが幸せになれるように、一番可能性がある人が我々の会社をつくっていくべき。そのスケジュールは未定だ。

 

 最新のCSR活動としては、「服を通じて世界を良い方向に変えていく」ということで、日本初のコミュニティ型「TSURUMIこどもホスピス」(大阪府大阪市)の建設を支援。また、全商品リサイクル活動にも注力し、累計3530万点を回収、累計1438万点(2015年2月末)を寄贈した。

 さらには、工場の労働環境や環境保全の取組にも努めている。我々の取引先は同業者と比べて圧倒的に少ない。信頼できる企業としか取引をしないためだ。信頼関係をまず築き、サプライチェーン全体における人権の尊重、労働環境の改善、環境保全に取り組んでいる。

 

 外部からは好調に見えるかもしれないが、今我々は死角だらけだ。

 事業経営をしていると、悪戦苦闘の毎日。毎日世界中からいろいろな問題が起きてきて、それを愚直に一点ずつつぶしていく。

 長期的にしか改善できないことは長期的に改善していく。

 たぶん、そういう情熱がなくなった時が、一番の死角だと思う。

 

 最後にファーストリテイリングの使命は、

 

「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」

 ことだ。

 

 本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します。
 

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