ファーストリテイリング2010年8月期決算実況中継(1) 上期大幅増益、下期減益

2010/10/10 05:53
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 ファーストリテイリング(山口県/柳井正社長)の決算発表を、このブログで毎回レポートしている。柳井さんを「今日の流通業界を代表する経営者」と私は位置付けており、その言動を可能な限り、記録しておきたいという思いがあるからだ。今日から3日間で決算説明会(10月8日@東証アローズ)の模様を再現する。(談:文責・千田直哉)

 

 2010年8月期(連結)の売上高は8148億円(対前期比18.9%増)、営業利益1323億円(同21.9%増)、当期利益616億円(同23.9%増)と増収増益を達成した。

 

 内訳を見て行くと、上期の売上高は4709億円(同31.8%増)、営業利益998億円(同43%増)と大幅な増益。下期の売上高は3438億円(同5%増)、営業利益324億円(同16.2%減)の減益に終わっている。

 上期(=2009年秋冬商戦)の大幅な増益の要因としては、第一にユニクロ事業が絶好調だったことが挙げられる。グローバルブランドとしてユニクロの認知度が大幅にアップした。同時に「ヒートテック」の大ヒットがあり、パリや上海のグローバル旗艦店と大型店の成功に後押しされた。さらには、ジル・サンダーさんとのコラボ事業である「+J」(プラスジェイ)が世界中で大好評を得た。

 一方、下期(=2010年春夏商戦)は、国内ユニクロ事業が不調だった。コア商品が不足したのと、春夏のマーケティングが失敗した。その一番の要因は「表面的なファッション」をやり過ぎたことだ。そこに、商品計画と生産計画の不備が重なった。その結果、色・サイズ欠品を起こした。また、企画・生産・販売体制の連動体制が不足したという反省もある。上期の好調に油断したようなところがある。そして、最後に天候要因があったものと考えている。

 

 2011年8月期の方針は、5項目からなる。

 

 1つ目は、商品力とマーケティング力の強化と売上の回復である。これはユニクロ本来の強みである「ベーシック商品」をより強くするというものだ。コア商品のさらなる開発・改善と商品構成の見直しをしていきたい。さらに、商品計画・商品企画・MD体制・生産の連動体制を強化するために「g.u.」(ジーユー)の中嶋修一社長(ファーストリテイリンググループ上席執行役員)を商品の草案の責任者に据え、「キャビン」の中島徹郎社長(同グループ執行役員)をウィメンズの草案の責任者に任命した。まさに全力を尽くして新しい商品体制を確立したいと考えている。

 

 商品構成を変えたいというのは、我々は「表面的なファッション」はやってはいけないということ。「本質的なファッション」あるいは「マストレンドとしてのファッション」とか、本質的にあらゆる人が欲しがるような要素というのは、服に入れなければいけないと思う。でも単純に少しだけ流行っているとか、そういうことに流されてはいけないと思う。

 

 2つ目はユニクロのブランディングである。

 我々は今後、海外により本格的に出て行きたいと考えている。その際に最も大事なのは「ユニクロは何者なのか?」というアイデンティティの存在だ。

 我々が考えているのは、「あらゆる人に着てもらえる本当に良い服、生活ニーズに応え、ライフスタイルを変えるような新しい提案を発信」することである。そして世界中の事業と世界中の旗艦店を通じてブランドを伝えていきたい。顧客の潜在ニーズに応えた商品を開発して、「グローバル情報発信製造小売業」を目指していく。

 

 3つ目はグローバルワン・全員経営体制の確立である。

 グローバルに事業を拡大して、世界中で人材採用・人材開発、経営者の育成をしていく。その実現に向けて、人事・報酬制度の統一と導入をする。そのために「G1」(ジーワン)と称する新しい業務・情報システムの構築に努める。グローバル企業にふさわしい業務と情報システムに会社のすべてをつくりかえるということだ。こういった形で本格的なグローバル経営体制をつくりあげたい。

 

 4つ目はソーシャルビジネスである。

 将来の中国のようになる可能性のあるバングラデッシュは、第一の産業が縫製業である。グローバル企業は、「本当に良い企業」しかなることができない。だから、我々が進出した国で、貧困・衛生・教育といった社会的課題を服の企画・生産・販売を通じて解決していきたい。

 このことは「GRAMEEN銀行」グループとのジョイントベンチャーを設立して実現していきたい。貧困層が充実した生活を営むことができるように雇用機会を創出したい。また衣食住の中の衣という生活のインフラを提供するようにしたい。

 

 5つ目は海外ユニクロ事業のさらなる拡大である。

 2010年8月期の海外ユニクロ事業はアジアにおいては大幅な増収増益を達成。店舗数は118店と対前期比42店舗増となった。中国・香港ではグローバル旗艦店(上海南京西路店)の売上が好調で、下期も既存店売上の2ケタ増が続き大幅増益を達成。韓国は下期も売上2ケタ増で粗利益率改善により大幅増益、シンガポールも売上トレンドが好調で増益を達成している。

 

 今後は「圧倒的なアジアナンバーワン」になりたい。2010年10月7日には台湾に1号店を出店した。過去の出店の中で最も成功したと評価しており、オープン前には440坪の店舗に2500人の行列ができた。できるだけ早く、日本と同じくらいの出店数を達成したい。

 

 11月4日にはマレーシアのクアラルンプル市ブキ・ビンタンエリアに650坪の1号店を出す。今後クアラルンプルに5~10店舗は出店できると考えている。その後も、東南アジア(ベトナム、タイ、インドネシア、フィリピン)などに出店を加速させる。

 欧米ではニューヨークの既存の旗艦店が好調であり、2011年秋にはニューヨークの5番街にグローバル旗艦店を開業する計画だ。英国の赤字幅が縮小している。またロシアに開業した1号店も売上は順調だ。今後も、ニューヨークとパリに5~10店舗を出店していきたい。その他のドイツやスペインなどの主要都市に出店を加速させたい。

 我々は、「MADE FOR ALL」ということで世界中のあらゆる人に本当に良い服を提供し、世界中のあらゆる人に服を着る喜びをお届けしたい。そういった企業にしていきたい。

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