ヤオコー川野清巳社長が語る 東日本大震災後の消費行動変化

2011/05/10 05:53
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 ヤオコー(埼玉県/川野清巳社長)が2011年3月期決算を発表した。連結ベースの営業収益は2210億6100万円(対前期比7.1%増)、営業利益96億300万円(同11.7%増)、経常利益94億1800万円(同11.3%増)、当期純利益51億4800万円(同6.6%増)の増収増益。同席上で川野社長は東日本大震災後の消費について語った。以下に抄録する(5月10日@鉄鋼会館)。

 

 ヤオコーが店舗展開するエリアは基本的には被災を免れた。

 3月11日に川越山田店(埼玉県)、川口本町店(埼玉県)、竜ヶ崎店(茨城県)、取手青柳店(茨城県)の4店舗を営業停止したが、3月14日には全店舗の営業を再開させている。 

 

 3月11日から2週間、企業としてのヤオコーは「ライフライン」としての役割に徹した。その中では、商品を確保し単純に並べることのみに終始せざるをえない。

 

 得手とする「ライフスタイル」の提案に切り替えないとヤオコーの良さは表現できないので、できるだけ早く「ライフスタイル」提案するように努めた。

 

 「ライフライン」機能に注力している期間のお客様の購買行動は、「何でもいいから欲しい」というものだった。

 たとえば、これまで2リットル88円、99円で販売されていたミネラルウォーターも在庫がなくなってしまうと200円でも300円でも買ってしまう。

 

 だから東日本大震災直後の2週間、家計は大きな出費を余儀なくされたはずだ。もちろん収入は変わらないのだから、財布の中身は傷んだはずである。

 

 また3月11日以降、お客様は外食や飲み会を控え、自宅で食事をとることが多くなった。

 内食の機会が増えれば増えるほど、家での食事にはメリハリが求められるようになる。

 そこで我々はお客様に対してミールソリューションの充実と少しでも値ごろで商品提供できないかを3月末から4月にかけて画策してきた。

 そして、そのことにしっかり対応できた店舗は『やさしいテーブルシリーズ』などのセミアップグレードの商品が売れた。

 

 もうひとつ。東日本大震災後、NB(ナショナルブランド)のパンが一気に品切れしてしまった。

 その代替として安定供給できる我々のインストアベーカリーでつくられる若干割高のパンを買い求められるお客様が多かった。

 お客様は、NBよりもおいしいと認識してくれたようで、4月、5月もインストアベーカリーの食パン系は好調をキープしている。

 

 買い回りを強いられ代替品を求める中でお客様に、少し変化が出てきたと言える。こういう時こそ、お客様に当社のカスタマーになっていただくチャンスなのだと思う。

 

 2011年3月の既存店売上高は対前期比9.6%増だった。売上のうちの3%くらいは、東日本大震災による“特需”と見ている。

 4月は同4.9%増と依然好調ではあるが、それがそげ落ちる恐れはいつでもある。

 その前に今まで以上の提案をしたり、価格のメリハリをしっかりつけることが大きな課題だ。早く実現したい。

 

 お客様の深層心理は分からないので我々は不安だらけだ。

 原子力発電所の問題や余震が落ち着き、商品供給が以前に戻り、棚に商品があふれるようになれば、お客様は今度は財布の紐を締めるだろう。

 その時期がいつになるのかは分からない。ただいまはまだ好調が続いている。5月も3月、4月のトレンドと変わっていない。

 

 現在の問題は、商品が売れるものの、追加が入ってこないので、売場が雑になっているということだ。欠品への意識も薄くなっている。

 早く「ライフスタイル」提案型に戻し、きめ細かに商品を見直したい。

 

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