三井物産アイ・ファッションと日鉄物産繊維部門の合併は産業再編の序章となりうるか?

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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2021年2月某日、朝の日課として早朝6時に起床し日経新聞に目を通していた私に、ロンドンから連絡が入った。「河合さん、河合さんの古巣の日鉄物産の繊維部門と三井物産アイ・ファッション(MIF)が合併するみたいですよ」と。私は、新聞電子版をあちこち探したが、朝6時に出ていたのは三井物産の鉄鋼部門を日鉄物産に譲渡するという記事ばかりだった。 
すぐさま、ロンドンからURLが送られてきた。それは「日鉄物産繊維部門とMIFが統合、2022年に新会社を設立する」という記事だった。朝7、8時になると嘘のように鉄鋼の話は消え「繊維部門の合併」の話が飛び交っていた。
今回は、この統合の裏側に何があったのか、そしてこの統合がアパレル業界全体にどんな影響があるのかについて、解説していきたい。

MIFと日鉄物産の繊維事業の統合が発表された
MIFと日鉄物産の繊維事業の統合が発表された

日鉄物産とMIF統合するも、両者の得意先は…

 今だからいえるが、日鉄物産繊維部門(旧住金物産)とMIF統合の話は、2~3年前から噂が流れ、業界関係者であれば、誰もが知っていた。各種メディアによれば、両者統合により売上2400億円規模の商社ができあがる、などと書かれているがそうはならないだろう。なぜなら、両社の得意先の多くが被っているからだ。MIFには大阪で化合繊原料の輸出が好調で、日鉄は良品計画向けの非衣料が得意である。被っていない事業といえばその程度だろう。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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