「食べたくないわけではない。しかし手軽に選べるかたちになっていない」
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)の藤田元宏社長がこう指摘するのは、鮮魚部門についてだ。
日本人の「魚離れ」が議論されるようになって久しい。実際、厚生労働省の調査によると、日本人の1人1日あたりの魚の摂取量は、2007年に肉の摂取量を下回った。
しかし、藤田社長に限らず、「魚を食べたいという欲求がなくっているわけではない」と話す食品小売のトップは少なくない。
魚離れの原因はさまざま指摘されているが、最も大きいのは「調理に手間がかかる」という側面だろう。女性の社会進出や高齢化が進むなか、料理に時間や手間をかけられる人は少なくなっている。
そうしたなか、食品小売各社が注力しはじめているのが魚総菜だ。煮魚や焼き魚はもちろん、鮮魚のカルパッチョやアクアパッツァなどの洋風メニューのラインアップを拡充する動きも見られるようになってきた。
藤田社長も、「(U.S.M.H傘下の)マルエツの魚総菜は非常に高い支持をいただいている」という。
社会環境が変化すれば、消費者から求められる商品も当然変わる。それは日本人が大昔から当たり前のように食べてきた魚についても同じだ。
魚離れについて、「われわれにも責任の一端がある」と藤田社長。消費者の毎日の食生活を支える食品小売業の担う役割は間違いなく大きい。(y)