新聞報道を鵜呑みにしない セブン-イレブンの7月不振・8月好調の理由を検証する
コンビニ売上苦戦の本当の理由
では7月のセブン-イレブン不振の要因は、7payだったのだろうか? 結論から言えば、気温の前年同月差が大幅にマイナスとなり、かつ記録的な低日照時間だったためだ。<図表1>は、コンビニの客数(既存店・前年同月比)と平均気温の前年同月差(東京都)の推移である。グラフを見る限り、気温の前年同月差とコンビニの客数・前年同月比は概ね同方向となっている。春夏秋冬のいずれであっても、気温上昇によって屋外に出る心理的・肉体的なハードルが下がり、外出する消費者が増加すると推察され、結果的にコンビニの来店客数の増加につながっていると筆者は解釈している。
2019年7月において、大消費地である東京都・東京の平均気温は24.1℃(前年同月差は4.2℃も低く、平年同月差も1.7℃低い)で、2003年7月(22.8℃)以来の冷夏となった。さらに、日照時間(81.1時間)は2007年7月(80.6時間)以来の少なさであり、前年7月(227.2時間)の1/3程度しかなかった。こうしたデータ(平均気温・日照時間)を見ると、(東京都において)梅雨明けが昨年よりも約1ヵ月遅かった影響は大きかったと言えよう。そして、それをビジュアルに表現したものが図表1となる。言うなれば「2019年7月はセブン–イレブンが全店ベースで減収に追い込まれるくらいの冷夏・天候不順だった」と表現できるかもしれない。
最後に、気温の前年同月差のシミュレーション値を用いると、季節要因の先行指標となることを紹介したい。<図表2>は、気温の前年同月差の推移で、より細かく旬ベース(上旬・中旬・下旬)としている。グラフ上のシミュレーション部分は、今後の平均気温が過去5年間の同月同期の平均値並みで推移するとの前提で、前年同月同期差を試算したものである。
図表2を見る限り、9月は(昨年との比較において)高気温で推移する見込みだが、10月以降は(昨年の暖冬の裏返しの形で)寒冬(あるいは厳冬)となる可能性が示唆されている。冬物の季節商品を販売する小売企業にとっては望ましい環境と期待されるものの、図表1を考慮すると、コンビニの販売動向に対しては苦戦要因となるかもしれない。セブン–イレブンを含むコンビニ各社は気を引き締めて今冬を迎える必要があろう。
ところで、2019年8月における東京都・東京の平均気温は28.4℃(前年同月差は0.3℃高く、平年同月差は1.0℃高い)となった。客観的に見て、コンビニを含む小売企業の販売に対してポジティブな環境だったのではないかと推察される。
余談であるが、9月12日付の某経済新聞の朝刊・財務面に「セブン 8月既存店売上高」との見出しがあった。記事の主な内容は「セブン–イレブン・ジャパンの8月の販売実績で、既存店増収率が前年同月比0.1%増だった」との主旨であった。そして、サブ見出しは“強さにじむ0.1%増”“働く女性・高齢者つかむ”である。本稿ではいかなる他紙・他社を批判する意図は全くないので当該記事へのコメントは控えるが、「良い子は真似をしないようにね」と思う今日この頃である。