続・規模拡大と地域対応 総合スーパーの失敗と食品スーパーが進む道
大手小売が規模拡大と地域対応を
両立した時の対応策とは!?
こうした歴史を見る限り、大手総合スーパーは店舗網の広域化の過程で、ほとんどデジャブ(既視感)とも言うべき同様の問題に直面している。それは中央コントロール強化の副作用としての地域対応の低下および営業力の弱体化である。1980年代の人気アニメ「北斗の拳」でのナレーション「悲劇はくり返される」が思い出される。または「歴史は繰り返す、一度目は悲劇、二度目は喜劇として」(カール・マルクス)であろうか。
ところで、上記総合スーパー企業の名誉のためにも、大手全国チェーンの強さについて触れておきたい。2016年4月の熊本地震(14日・16日に震度7を観測)にて、マックスバリュ九州の店舗も被害を受けた。4月14日の前震の当日、当該エリア全店舗の休業となったが、翌15日には開店した。16日の本震の際は、4日間の休業を余儀なくされたものの、同業他社よりも早期の営業再開を果たしていた。背景にはイオンからの商品供給のサポートがあり、マックスバリュ九州サイドでは店舗再開に専念できたことが大きかったようだ。14日の前震のすぐ後、イオン側は物資を手配し、その夜のうちに羽田空港等から鹿児島空港に空輸、マックスバリュ九州の配送センターへ送り届けたという(筆者の取材ノートより)。実はイオンと日本航空(JAL)は(東日本大震災の際に連携した経験を踏まえて)2016年3月に「緊急物資の輸送に関する覚書」を締結しており、連絡経路の確認や旅客機用貨物コンテナへの物資の積み込み方など、緊急時に即応できる体制作りを進めていたとのことである。全国的な店舗網と配送ネットワークを構築し、航空会社とも連携できる大手流通企業の底力を示した事例の1つと思われる。
やはり規模と広域ネットワークは圧倒的な強みになりうるのである。今後、大手小売企業がきめ細かに地域対応できる体制を整え、その上で規模の力を見せつけてきた場合、各地の食品スーパー企業はどのように対抗するのであろう。個々の食品スーパーが分立したままでは、分断され、個別撃破されていくリスクが大きくないだろうか。
本稿では「続・地域対応」として地域対応の重要性を述べてきたが、前回と同様の文章で締めたい。すわなち、他業態との競争激化も含めた食品スーパーの収益環境が一段と厳しくなる状況下、規模拡大によるスケールメリット享受と競争力強化は避けられない。しかし、方向性は明確である。店舗展開エリアの広域化(=規模拡大)と地域対応を両立するために、地域ごと・季節ごとの食材・食生活を熟知した地元チェーンの買収や大同団結が非常に有力な選択肢となる。連合結成によって規模の競争力を発揮すべきという時代に直面しているのではなかろうか。
東京の蒸し暑い夏はいまだに苦手ながらも、梅雨明けと夏の訪れを待ちわびつつ、そんなことを思う今日この頃である。