社員が畑仕事を手伝い、関係性を構築!無印良品が掲げる地域への“土着化”とは
開発のきっかけはコロナ禍
「これらの商品を開発することになったきっかけの一つとして、新型コロナの流行によって『つながる市』の開催が難しくなったことが挙げられる」と松枝展弘近畿事業部長は語る。
「つながる市」とは、「ヒトとつながる、マチをつなげる」をコンセプトに、無印のイベントスペースや店舗周辺スペースで、地域の農家や事業者が特産品などを販売するイベントだ。地域の生産者や加工会社と地域住民をつなぐ場として発足したが、コロナ禍により開催が難しくなった。また、生産者が食材を廃棄せざるを得ない状況になったことも手伝い、地区限定商品の開発に踏み切った。
「つながる市」開催時から、開発部の社員や現場社員が農家に直接訪れ、畑仕事を手伝ったり、時には食卓を共に囲むことによって、生産者の声をひろい、関係を深めてきた。そのため、開発にあたってはどの農家も協力的で、現場社員が農家と密に関わることにより、商品を“自分ごと”として売るという思わぬ利点もあったという。
松枝展弘近畿事業部長は、「衣食住を無印良品のテーマとして掲げている、特に食を強化していこうと考えている。今後は地域の生産者や事業者と協業するように店舗づくりをしていきたい。また、新型コロナの流行で中止していたつながる市も再開し、地域限定商品との“かけ算”でさらに深い展開をしていけるのではないか」と期待を込める。
さらに、近畿事業部の取り組みとして、近畿の32店舗(11月末時点)を、2024年までに、50店舗まで増やすドミナント戦略を発表。スーパーマーケットや商店街の近くに出店し、地域に溶け込んでいきたいとした。
一方で「たとえば、スーパーマーケットの横に出店するときは生鮮品の取り扱いはしない。競合ではなく協業と捉え、出店を進めていきたい」(松枝氏)とも語る。ステークホルダー全体の利益を考え、出店を進める良品計画の戦略、および地域への“土着化”は成功なるか。