ストックのしやすさと調理の簡便性から需要が拡大した即席麺市場、コロナ禍でも袋麺を中心に大きく伸長

山田陽美(ライター)
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大手メーカーによる新アイテムの投入や、話題性のあるプロモーションを継続的に実施することで、堅調な拡大を続けてきた即席麺市場。コロナ禍での内食機会の増加により、袋麺を中心に需要が高まったことで、即席麺はさらに大きく伸長している。

即席麺の19年の国内生産量は5年ぶりにマイナス

 日本即席食品工業協会によると、2019年の即席麺の国内生産量は57億1628万食で対前年比0.2%減。前年まで4年連続の総需要拡大となっていたが、5年ぶりのマイナスとなった。内訳をみると、カップ麺は39億7021万食で同1.1%増、袋麺は15億9870万食で同2.7%減、生麺は1億4736万食で同5.3%減。カップ麺は19年も堅調だったが、袋麺、生麺が前年割れとなった。

インスタント麺
i-stock/bhofack2

 KSP-POSデータの袋麺の期間通算(2019年10月~20年9月)の金額PIは、7044円で対前年同期比19.3%増。縮小傾向にあった袋麺だが、首都圏をはじめ近隣エリアを襲った台風被害による備蓄用としての需要が高まり、10月は同13.2%増となった。また、新型コロナウイルス感染拡大に伴う巣ごもり生活により、家庭にストックしやすく調理の簡便性が高い袋麺の価値があらためて見直され、3月以降は需要を伸ばした。3月は同39.6%増、4月は同58.6%増、5月は同33.3%増と大きく伸長した。手軽にアレンジしやすく、コスパも高い袋麺は休校中の子供や在宅勤務時のランチなどに活用されたようだ。

 この秋、日清食品は若年ファミリー層に向けて、濃いスープが特徴の「日清これ絶対うまいやつ!」を新発売。明星食品は、今までの即席麺の常識を超えた太くコシのある麺と濃厚なスープの「明星 麺神(めがみ)」ブランドを立ち上げ、関東・甲信越で袋麺を、全国でカップ麺を発売した。

 若年層に向けた袋麺の新ブランドの投入で、袋麺市場がさらに活性化することは間違いなさそうだ。

カップ麺とインスタント袋麺の金額PIおよび金額PI対前年推移

カップ麺は定番を中心に安定成長が続く

 ロングセラーブランドの安定的な売れ行きで堅調に推移しているカップ麺市場。KSP-POSデータのカップ麺の期間通算の金額PIは、1万6707円で対前年同期比8.1%増。袋麺同様に10月は台風被害による備蓄用需要で同15.3%増と伸長し、3月以降は内食機会の増加で需要を伸ばしたが、袋麺ほどの伸びはみられない。3月は同13.1%増、4月は同15.4%増となった。5月以降も堅調に推移しているが、8月は猛暑の影響なのか前年割れとなった。

 ロングセラーブランドを筆頭に定番商品が底堅い人気のカップ麺。とくに「カップヌードル」に代表される縦型カップ麺が市場をリードしてきたが、この秋は和風どんぶり型カップ麺のリニューアルが目立つ。日清食品では東日本向けに販売している「日清のどん兵衛 きつねうどん」をリニューアル。本鰹と宗田鰹のだしにより、コクと深みが増した味わい深いのつゆに仕上げた。東洋水産では、今年8月に発売40周年を迎えた「緑のたぬき天そば」をリニューアル。天ぷらをさらにおいしく改良した。

 エースコックでは、食物繊維豊富なもち麦を粉にして練り込んだ「もち麦めん」を使った「すこやか和膳 もち麦めん」を新発売。独特の食感が楽しめる同商品を新しい和風麺として定着させていく考えだ。

 手軽さや豊富なラインアップで需要を拡大してきたカップ麺は、今後も引き続き拡大が見込まれている。

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