カテゴリー全体を活性化する新商品の開発に期待、注目商品ピックアップ=2020年秋冬 注目マーケティングトレンド

ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局
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【新フレーバー】期間限定フレーバーの投入でブランドの鮮度アップを図る

丸大食品「海老スンドゥブ」、マンナンライフ「蒟蒻畑」抹茶味、日清フーズ「日清 から揚げ粉 逸品」、フジッコ「おかず畑 おばんざい小鉢 なめらか白和え」

 ブランドの鮮度感アップと新規ユーザー獲得を図るのに役立つのが新フレーバー。期間限定の商品などは売場に季節感を演出することにも活用されている。

 やわらかな豆腐でつくる韓国家庭料理のスンドゥブの素カテゴリーをリードする丸大食品では、この秋に新シリーズを発売する。ベースの魚介の味をあさりから海老・牡蠣に変更。海老・牡蠣の旨みと自家製調味料(タデギ)の濃厚な旨辛スープの「海老スンドゥブ」と「牡蠣スンドゥブ」をラインアップ。海老や牡蠣は、鍋に入れる魚介類ランキングでは上位にランクインし、外食でも「海老スンドゥブ」「牡蠣スンドゥブ」は人気となっていることから、新フレーバーの売上拡大に期待が寄せられている。

 マンナンライフでは、こんにゃく(グルコマンナン)を果汁で味つけしたフルーツこんにゃくの「蒟蒻畑」シリーズのラインアップを拡充。コロンビア産のアラビカ種コーヒー豆を100%使用し、風味豊かで力強い味わいの「コーヒー味」を9月1日に新発売。さらに、こだわりの国産抹茶の風味が最大限に引き立つよう開発を重ね、香り高い風味と鮮やかな緑色を表現した「抹茶味」を数量限定で9月14日から発売する。

 から揚げ粉のトップメーカーである日清フーズでは、「日清 から揚げ粉」シリーズから、「同 逸品」を発売。同社独自の知見と配合設計の工夫により、サクッとした衣の仕上がりを実現した。から揚げの需要が高まる行楽シーズンに向けて、シリーズのさらなるファン獲得と市場の活性化を図る。

 食卓におかずをそのままプラスするフジッコの「おかず畑 おばんざい小鉢」シリーズには、2種類の豆乳と豆腐に、4種の具材を加えた「なめらか白和え」をラインアップ。同ブランドは、おいしさと長期保存の両立で、見映えよく、使い勝手もよいのが特徴。有職主婦の増加により、小容量総菜は伸長していることから、メニュー需要の高い「白和え」を発売することで、シリーズの強化を図っていく。

【酒類】新ジャンルはこの春にメーカー3社が新ブランドを投入

サッポロビール「サッポロ GOLD STAR」、アサヒビール「ザ・リッチ」、サントリー「サントリーブルー」

 19年10月の消費税増税などの影響もあり、ユーザーの節約志向がさらに進むなか、新ジャンル商品への期待が今まで以上に高まっている。そのためこの春は3社から新ジャンルの新ブランドが発売された。サッポロビールは、二大ブランドの「サッポロ生ビール黒ラベル」と「エビスビール」に採用している麦芽とホップを一部使用し、「力強く飲み飽きないうまさ」を実現した「サッポロ GOLD STAR(ゴールドスター)」を発売。販売好調を受け、年間販売計画を発売時より100万ケース増やし、460万ケースに上方修正した。

 アサヒビールは、“プレミアムビールのような上質さ、贅沢感”をめざして「アサヒ ザ・リッチ」を新発売。同社新ジャンル商品として最大級の原麦汁エキス濃度にすることで、コク深い味わいを実現した。テレビCMやWEB、SNSなどデジタルを活用した情報発信を行っている。

 サントリーでは、天然水100%仕込にこだわりながら、醸造香が特長のエール酵母と、爽快感のある香りが特長のカスケードホップを使用した「サントリーブルー」を新発売。スッキリとした飲みやすさの両立を実現した。川口春奈さんを起用したテレビCMで認知拡大を図っている。10月の酒税法改正により新ジャンルの値上げが予想され、今後さらに競争が激化しそうだ。

RTDはこの春にキリンビールがブランドを強化

キリンビール「ザ・ストロング」、キリンビール「氷結®シチリア産レモン」、サッポロビール「うまみ搾り」、キリンビール「グリーンズフリー」

 酒税法改正により節約志向が高まることで、リーズナブルでバラエティ感のあるRTDへの流入が加速しそうだ。

 キリンビールでは、この春に「キリン・ザ・ストロング」シリーズを中身・パッケージともにリニューアル。うまみを凝縮させた麒麟特製「うまみエキス」により、飲みごたえと飲みやすさを両立した調和のとれた味覚を実現した。リニューアルに合わせてテレビCMを中心とした大規模な広告投入により、話題化を図った。限定品の「豊潤レモンサワー」の発売の9月以降もレモンサワー中心に広告を継続する。

 さらにキリンビールでは、「キリン 氷結®」「キリン 氷結®ストロング」シリーズをリニューアル。「氷結®」の中心価値である「スッキリ爽やかなおいしさ」を進化させ、パッケージ・中身・コミュニケーションを刷新。主力の3フレーバーを中心に、もともと「氷結®」が持っているフレッシュな果汁感に加え、ドリンカビリティ(すっきりした飲みやすさ・飲み飽きしない味覚バランス)を向上させた。年間最大規模のテレビCMやWEBを展開する。

 ノンアルコールビールテイスト飲料では、サッポロビールが、尿酸値を下げる素材「アンセリン」を50㎎/本配合し、アルコール度数0.00%、プリン体0を実現した機能性表示食品「サッポロ うまみ搾り」を6月に発売した。大麦エキスを使用したリッチなおいしさと豊かな旨み、すっきりとした飲み口が特長のノンアルコールビールだ。

 キリンビールでは、ビールに近い味覚を実現するため、香料・人工甘味料を使わず、日本初の製法で麦やホップといった素材そのもののよさが引き立つ香味を実現した「キリン グリーンズフリー」を4月に発売した。自然派ビールテイスト炭酸飲料という新しいジャンルで提案する。新たな価値を訴求することで、新規ユーザーを取り込み、カテゴリー全体の活性化が期待できそうだ。

専門家の視点

AsanoGroceryAcademy代表浅野 義昭 氏
AsanoGroceryAcademy代表 浅野 義昭 氏

AsanoGroceryAcademy代表 浅野 義昭 氏

withコロナ時代のマーチャンダイジング

 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、緊急事態宣言が発出され、自宅で過ごす時間が長くなったことで、手づくり需要が増えています。お好み焼やホットケーキ、ホットプレートを使った焼肉などの需要が高まりました。緊急事態宣言が解除され、街の賑わいも徐々に戻ってきていますが、手づくり需要は引き続き、続くと考えられます。これまで時間がかかることから敬遠されてきた煮物なども見直されています。乾物は日持ちがするため、家庭内ストックとしても最適。店頭で「乾物で煮物をつくろう」という提案も効果的です。

 また、料理初心者をターゲットに比較的つくりやすい、から揚げやハンバーグ、カレー・シチューなどをエンドで提案してはいかがでしょうか。ハンバーグのソースやカレーの具などで変化をつけることもできます。コンビニエンスストア(CVS)との差別化を図るために「おにぎり提案」もおすすめです。お米と海苔だけでなく、人気具材の「ツナマヨ」や「炊き込みおにぎり」「いなりずし」など、親子で楽しくつくれるおにぎりを提案しましょう。こうしたことはCVSやドラッグストアにはできない提案といえます。

 またコロナ禍により、マネキンを使った試食販売ができなくなっています。そのためメーカーには、バイヤーだけでなく従業員向けの試食を提案したい。消費者に近い立場にあるパートさんにも食べてもらい、「店長おすすめ」という形で紹介することで、消費者も手に取りやすくなります。また、新商品は定番に置いておくだけでは消費者の目につかないため、コーナー化することが効果的。定番の棚1段でも新製品コーナーとして目立たせて、消費者にアピールする必要があるでしょう。

 新商品は短期間で売り切ってしまう商品と育成していく商品で売り方を変える必要があります。新商品が次々に発売される菓子などはオートマチックに入れ替えていき、数字が悪くてもじっくり育成していく商品は目標値を決めて長期的に訴求していく必要があります。

 これまで食品スーパーの競合は同業者だけでしたが、最近はCVSやドラッグストアも競合となっており、食品スーパーに足を運んでもらう工夫が今後ますます必要になってくるでしょう。

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