“冷やしたビール”を売る必要性はあるのか  2020年代のショーケース刷新問題から考える

2022/02/01 05:55
    宮川 耕平(日本食糧新聞社)
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    省エネだけじゃない! ショーケース刷新を要請する問題

     ショーケースに関わる環境対策は省エネだけでは片付きません。冷媒の問題があります。かつてはオゾン層を破壊するフロンガスが問題になり、代替フロンに置き換わりました。ところが代替フロンは、CO2の数百倍から1.5万倍も温暖化係数が高いことが問題視されるようになりました。日本を含む先進国においては、2036年までに代替フロンの生産・消費量を11~13年比で85%削減することが合意されています(モントリオール議定書キガリ改正)。中間目標として29年に70%削減という設定もあります。

     国内の状況を見ると、フロンガスからのスイッチが本格化した05年以降、代替フロンの排出量は19年時点で約2倍(CO2換算)に増加しています。温室効果ガス全体の排出量は13年をピークに減少していますが、代替フロンだけ増え続けている現状です。しかもガスの種類別ではCO2に次ぐ排出量です。(環境省・経産省「代替フロンに関する状況と現行の取組について」2021年4月より)

     この状況が放置されるわけがなく、20年代を通じて代替フロン冷媒から自然冷媒(ノンフロン)機器への置き換えが進むでしょう。自然冷媒とは、フロンのような人工化学物質ではなく、二酸化炭素やアンモニア、家庭用の冷蔵庫で使用されている炭化水素などです。スーパーで稼働中のショーケースは、台数的にはほとんどが代替フロン機器という現状なので、10年単位で見た場合の変化はドラスティックなものになるはずです。代替フロンの使用には漏洩管理などの義務が伴うばかりか、今後は代替フロンの製造自体も規制されていくため、使用そのものが困難になっていく流れにあります。チェーン経営を2030年代にも続けていくには、避けて通れない投資になります。

     ショーケースを抜本的に見直さねばならない以上、そこに何を陳列すべきか再考するタイミングかもしれません。この投資対効果を測るのは効率や顧客満足だけではなく、環境負荷も含まれるところが、2020年代ならではの問題です。

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