価格競争が激化!2022年版、ヨーロッパ寡占化動向

取材協力:高島 勝秀(三井物産戦略研究所 産業情報部産業調査室 シニアエコノミスト)
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市場占有率大のコピー

英調査会社のユーロモニターによると、2021年の欧州※のグロサリー市場規模は対前年比6.1%増の約1兆5193億ドルだった。本稿では、欧州全体のシェアの5割を占める主要3カ国(英国、ドイツ、フランス)に注目し、各国の寡占化動向を見ていきたい。

※本稿では、14カ国(英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、トルコ、オランダ、スイス、ベルギー、スウェーデン、オーストリア、ノルウェー、デンマーク、アイルランド)を指す。文中の市場規模やシェアの数値は英ユーロモニターのデータに基づく。データはすべて実店舗のもので、 EC売上高などは含まない

英国●市場規模約2542億ドル
市場が2ケタ伸長!上位企業の価格競争激化

 英国の21年度のグロサリー市場規模は対前年度比10.3%増の2542億ドル(30兆5040億円:1ドル=120円で換算、以下同)。対前年度の伸び率は、英国、ドイツ、フランスの欧州3カ国で最も大きくなっている。

英ハットフィールドのテスコ
欧州全体のシェアの5割を占める主要3カ国(英国、ドイツ、フランス)に注目し、各国の寡占化動向を見ていきたい。写真は2020年10月、ハットフィールドで撮影(2021年 ロイター/Peter Cziborra)

 テスコ(Tesco)、セインズベリー(Sainsbury’s)、アズダ(Asda)、モリソンズ(Morrisons)の「ビッグ4」の市場シェアは5 3 . 3 %で、1 8 年時点の54.9%からやや減少した。これらにアルディ(Aldi)、コープ(CooperativeGroup)、シュヴァルツ・グループ(Schwarz Gruppe)、ジョン・ルイス(JohnLewis)を加えた上位8社の市場シェアは73.4%で、18年とほぼ同等となっている。

「ビッグ4」は概ね市場規模の伸び率と同等に売上高を伸ばしている。各社とも、プライベートブランド(PB)の商品開発や独自のMD(商品政策)はもとより、店舗のデジタル化などにも積極的に取り組み、着実に成果を上げていることがうかがえる。

 たとえば、テスコは21年10月、ロンドンで初のレジレス店舗「GetGo(ゲットゴー)」を開業。セインズベリーも同年11月、アマゾン(Amazon.com)のレジレスソリューション「ジャスト・ウォークアウト(Just Walk Out)」をロンドンの1店舗で導入した。

 「ビッグ4」に次ぐアルディは、英国での店舗数の増加に伴って市場シェアを順調に拡大させている。20年時点で英国世帯の60%以上をカバーし、店舗数は21年12月末時点で940店舗以上に増えている。23年までに13億ポンド(2080億円:1ポンド=160円で換算)を投資し、この2年でさらに100店舗を出店する計画だ。

 テスコやセインズベリーではアルディの価格に合わせて値下げする「アルディ・プライスマッチ(Aldi Price Match)」を実施して対抗している。しかし、英国での

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