あのユニクロも苦しんだのに! ワークマンに“ブームの反動減が来ない”明確な理由

柳平 孝 (いちよし経済研究所主任研究員)
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初期ユニクロと同様、ワークマンブームの反動は来るのか?

 代表的な視点の1つは、専門店からSPA(製造販売型)企業へのビジネスモデル転換による成長との見方で、日本を代表するSPA型企業であるファーストリテイリング(以下Fリテ)傘下の基幹ブランド「ユニクロ」の1990年代末~2000年代初頭との比較であろう。

 たしかに、当時のユニクロの成長物語といくつも共通点が指摘される。例えば、機能性が評価されていたアイテムのタウンウエア化、圧倒的な低価格、プロモーション(注:ユニクロの2000年秋冬TVCMはミュージシャンの松任谷由美氏、同社はSNSTV番組での特集)などである。また、店舗面でも、ユニクロの首都圏初の都心型店舗である原宿店(東京都渋谷区)の開店が199811月、ワークマン初の一般向け店舗「WORKMAN Plus1号店「ららぽーと立川立飛店」(東京都立川市)の開店が20189月で、転換点となる新店の開店時期からの類推で、現在のワークマンは1999年冬のユニクロに似ていると見る向きもあるようだ。筆者自身も当時をリアルタイムで経験しており、共感する点も多い。

 一方、約20年前の「ユニクロ」フリースブームの事例と比較され、ワークマンの売上動向に関しても今後の反動減を懸念する見方もあるようだ。1999年~2001年にかけて、フリースをはじめとしたユニクロ商品の急速な販売数増加は、自分と同じ服を着ている人を時折見かけることにもなり、消費者の間で”ユニバレ”(ユニクロを着ていることがお互いに分かってしまうこと)なる言葉も生まれた。そして、販売数量の急増・業績急拡大の反動減も大きく、Fリテの2002年8月期・連結営業利益は前期比半減している。

反動減リスクは低い その理由は販売数量にある

 こうした見方に対して、筆者は当面“ワークマンばなれ”の顕在化や反動減リスクは考えづらいと考えている。理由は、同社のPB商品の販売数量を見る限り、まだ普及の途上にあり、一層の販売増加の余地が大きいと予想されるためだ。

 Fリテのフリースの事例では、フリースブームのピークとなった2000年秋冬シーズンにおいて、フリース販売枚数は約2,600万枚に達していた(1998年秋冬:約200万枚→1999年秋冬:約850万枚→2000年秋冬:約2,600万枚)。日本の人口を約12,000万人(当時)とすると、単純な人口比で約2割強のシェアに相当する。仮に5人に1人が「ユニクロ」のフリースを着ていると想定すれば、街中で自分と同じ服を着ている人物に遭遇する確率も相応に高くなる。

 一方、同社のPB商品に関して、主要3ブランドの中で最も売上高の大きい「FieldCore(アウトドア向け)の販売枚数は2019年3月期実績で305万点(150アイテム合計、販売金額71.3億円)である。最近の売上増加を考慮して2020年3月期上期(4-9)実績(185アイテム合計で243.8万枚)を通期換算(上期実績×2)しても487.6万枚である。仮に500万枚としても前述のフリース枚数(2,600万枚)の約2割でしかなく、同社のワーキングウエアがタウンユースへ普及する初期段階と言っても過言ではないかもしれない。

 上記の試算値を踏まえると、同社のPB商品の販売数量の増加余地は大きいとの仮説を得られ、同社の売上伸長が続く可能性が高いのではないかと筆者は期待している。

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記事執筆者

柳平 孝 / いちよし経済研究所 主任研究員

1991年北海道大学経済学部卒、同年大和総研入社。小売業界アナリストとして、INGベアリング証券(現マッコーリーキャピタル証券)、日興シティグループ証券(現シティグループ証券)などを経て、2011年1月より現職。公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員

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