スーパーマーケット業界のゲームチェンジャー、オーケー創業者・飯田勧氏の経営哲学とは
投資効果を綿密に計算し最新技術を積極的に導入
EDLPを大胆に推し進める一方、店舗運営においては最先端の技術を次々に導入していることもオーケーの特徴だ。そのひとつが、コンピュータである。同社が最初にコンピュータによる商品管理システムを取り入れたのは、実に64年までさかのぼる。当時はコンピュータを導入する小売業はまだ少なかった。
早くから飯田社長がコンピュータに着目したのには理由がある。飯田社長の長兄の友人に「日本のコンピュータ産業の父」と呼ばれた富士通の元専務である池田敏雄氏がいたのだ。飯田社長は池田氏が話すコンピュータの可能性に感銘を受け、コンピュータの早期導入を決めたのである。
会社の規模拡大に合わせるように、自前でシステムの開発を進めてきた。02年9月には自動発注システムを試験的に稼働させた。03年10月には日配食品に、04年12月にはグロサリーに自動発注システムを導入している。これにより商品回転率が向上し、廃棄ロスは減少した。
さらに過去の実績に基づき、店舗ごとに販売数量を予測して棚割を組み立てる自動棚割の仕組みを07年から導入。自動発注システムと連動させることで、発注や補充作業量の軽減を図っている。
店舗設備の面では、03年からCAS(セル・アライブ・システム)仕様の冷凍庫を導入。CASとは、食品の水分子を動かし、細胞組織を壊さずに凍結することができる革新的な冷凍技術だ。解凍しても本来の旨みや食感を維持することが可能になった。
CAS仕様の冷凍庫は全店に導入されており、設備投資額は店舗当たり約8000万円だ。「生鮮食品は鮮度で決まる。ハードを刷新するだけで鮮度が改善するなら安い投資額」と飯田社長は話す。
実際、 CAS導入により消費期限が延びるとともに、廃棄ロスが減少。今後は海産物だけではなく、農産物や畜産物でもCASで凍結した商品を増やしていく考えだ。投資額以上のリターンを十分に計算した設備投資を行っているのである。
同社は経営目標として04年に経常総経費率(経常総経費=販売管理費に株式交付費などを調整して含めた数値)15%台、経常利益率4%台を掲げていたが、05年3月期にその目標を達成。11年3月期は経常総経費率14.78%、経常利益率5.64%という実績を残している。
コンピュータを活用した新システムや、革新的な店舗設備の導入など積極的な先行投資を、経営数値の改善へと着実に結び付けている。E D L Pの実現に不可欠な、 EDLC体制を着々と築き上げてきたのである。「まだ公表はできませんが、新しいことを計画しているので楽しみにしていてください」と話す飯田社長のEDLP追求への意欲は衰えを知らないようだ。
今後、少子高齢化が進み、人口減少社会に突入するなど、従来とは異なる社会環境への対応に追われる小売業界。オーケーではどのような対応策を考えているのだろうか。
「わが社だけで社会情勢の変化に対応できることには限りがあります。力の及ばないことを考えてもしようがない。たとえ人口が減少していくとしても、消費がゼロになるわけではありません。限られたパイの中でも、売上を拡大できる余地はまだまだたくさんあります。また、今でも自分でカートを引いて買物すると、この売場は不便だとか、この商品はよくないと感じることが多々ありますから、これを一つひとつ改善していきます」。
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