最新型ユニクロが前橋にやってきた!#1 佐藤可士和氏が語るユニクロとの17年間
2020年3店舗の日本グローバル旗艦店でチャレンジした新フォーマット
社会から受け入れられ支持され続けるために、どんなブランドになって、どんな店を作っていくべきなのか。その答えを模索しながらも、確実な手応えがあったのは、2020年春に日本で3店舗の新店をオープンしたことだという。
まず4月の「UNIQLO PARK横浜ベイサイド店」(神奈川県横浜市:売場面積660坪)では、ファミリー層の多い商圏に合わせて店舗の周りや屋上を誰でも入れる公園にした。店舗の外側全体にすべり台、ボルダリングやクライミングなどを配し、子供たちが自由に遊べるようになっている。屋上のジャングルジムからは東京湾を一望できる。それまでユニクロの店舗はあくまで買い物をする場所であって、いかに商品を見やすく、選びやすく、買いやすくするかということに注力されてきた。しかし、UNIQLO PARK横浜ベイサイド店は初めて、「人が集う場所を作る」ということにチャレンジした。
そして、この店舗で初めて、ユニクロは花を販売し始める。
「店は買い物する場所」から「店は買い物しなくても、人が集まれる場所」であるというこのフォーマットに手応えを感じながら、ユニクロは同6月に「ユニクロ原宿店」(東京都渋谷区:600坪)、そして銀座の「UNIQLO TOKYO店」(東京都中央区:1500坪)をオープンさせる。
原宿店ではポップカルチャーの発信基地として若者が集まるよう、多くのブランド・アーティストとの協業コーナーを作った。UNIQLO TOKYO店ではコーヒースタンドを作り、地元・銀座にある老舗喫茶店のスイーツも提供している。
そして、2023年4月にオープンしたのが前橋南インター店である。地域に開かれた店を目指して、店舗デザインは全面をガラス張りにした。店の前には芝生のガーデンがあり、今後様々なイベントが予定されている。店内には子供たちが遊べるコーナーや、地元で人気のスイーツを提供するカフェコーナーのほか、高崎名物のだるまがディスプレイされていたり、地元企業とのコラボTシャツが作れるコーナーもある。見ているだけで楽しい道の駅のような雰囲気だ。
ロゴはエンターテイメントのコンテンツ
もう一つ、前橋南インター店で目を引くのは、店舗の四隅に巨大な立体ロゴを配した斬新なデザインだ。
2021年に国立新美術館で開催された「佐藤可士和展」。中でも印象深かったのは、これまで佐藤氏がデザインしてきた企業ロゴを3m超のサイズに巨大化して展示したコーナーだ。この展示を通して、佐藤氏はあることに気づかされたという。
「これは僕も予想外だったのですが、企業の巨大ロゴと一緒に写真を撮ってくださっている方がものすごく多かったんです。皆様とても楽しそうに写真を撮って、SNSに上げていました。一つのブランドのロゴもスケールを超えてプレゼンテーションの仕方を変えると、エンターテイメントのコンテンツになるんだなということを、『佐藤可士和展』を通して確信したんです」(佐藤氏)
そして、前橋南インター店では、7m四方の巨大なユニクロの立方体ロゴが生まれた。
プロジェクト初期の打合せで佐藤氏がホワイトボードに描いた、手書きのラフスケッチが残されている。これを見ると、最終的に出来上がった店舗がはじめのスケッチそのままの形で完成していることに、あらためて驚かされる。
2006年にニューヨーク SOHO店でデビューした新しいユニクロのロゴは、2020年UNIQLO TOKYO店で3D表現となり、2023年前橋南インター店で巨大化した。もしかしたら、2006年当時からこうなることを予測してロゴデザインを作ったのかとさえ思う。佐藤氏は常々「ロゴとは、ブランドの理念が凝縮したものだ」と語っているが、今回「UNIQLO LOGO STORE」と銘打った前橋南インター店では、まさに巨大化したロゴそのものがランドマークであり、ブランドを発信するものとなっている。
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