食とビューティ強化でインフレ下で再成長 米ターゲットの経営戦略とは
長引くインフレと重い関税措置は、ファッションや生活雑貨などの売上高構成比が高いターゲット(Target)にとって強い向かい風となっている。そんな中、食品とビューティーを成長の柱と位置づけ、景気後退局面でも持続的成長をめざす同社。
他社ブランドとの協業などによって、逆風下でも一定の利益を確保している。
24年度は減収減益出店も当面は減速へ
ターゲットの総売上高は2022年度の1091億ドルをピークに、23年度が1074億ドル(対前年度比1.6%減)、24年度は1065億ドル(同0.8%減)と減少傾向にある。
一方で純利益はコロナ特需に沸いた21年度の69億ドルから一時数字を落としたものの、23年度が41億ドル(同48.8%増)、24年度は40億ドル(同1.2%減)と比較的堅調に推移している。

店舗をフルフィルメントセンター(FC)として活用する「ストア・アズ・ハブズ戦略」や、出店ペースのスローダウンといったコスト抑制策が一定の効果を示しているようだ。出店戦略では、24年度からの10年間で300店舗以上の新規開業を計画していたが、24年度は23店、25年度は20店にとどまる見通しだ。
ターゲットは25年3月に発表した「2025年度成長戦略」において、30年までに150億ドル以上の売上伸長をめざす目標を掲げている。この成長戦略で注目されるのが、食品部門とビューティー部門だ。この2つは、景気後退局面でも安定した需要が見込まれる領域といわれる。
実際に、ターゲットにおける両部門の売上高構成比はインフレ下でも着実に伸長しており、業績を下支えしている(図表❶)。
成長戦略のもう一つの柱が「低価格」と「差別化」によるマーチャンダイジング(MD)強化だ。このうち「低価格」のMDとして、24年5月に約5000アイテム、同年10月に約2000アイテムを値下げした。加えて、生活必需品の低価格PB「ディールワーシー」を24年2月から導入し、価格訴求型のラインアップを強化している。
一方、「差別化」のMDとして挙げられるのが、高品質食品を値ごろ感のある価格で提供するPB「グッド&ギャザー」である。人工添加物を使用していないことを最大の特徴とするこのブランドは、19年8月に開始し、年間売上高は現在40億ドルに到達。
ターゲット商品部食品・飲料SVP(シニア・バイスプレジデント)のジョン・コンリン氏は「ターゲットで購入される食品のうち40%は同ブランドの商品を1点以上含んでいる」と語っている(※)。
また、ターゲットは「グッド&ギャザー」から派生したPB「グッド&ギャザー・コラボ」を25年3月に立ち上げた。同ブランドでは、熱狂的人気を誇るSMトレーダージョーズ(Trader Joe’s)を意識したテイストの商品を販売しており、有名シェフとのコラボ商品シリーズなどもラインアップしている。
※Progressive Grocer, ‘Exclusive: Why Target’s Good &Gather line hit the mark’, 2024年10月2日より

他社ブランドとの協業で、ブランドイメージ差別化へ
PB以外でターゲットの強みとなっているのが、デザイナーブランドやD2Cブランドとの協業による商品展開だ。25年2月に同社のホームカテゴリーPB「ピローフォート」が「ディズニー」や「マーベル」とコラボし、子供向けベッドリネン約50アイテムを追加した。
さらに同年4月には、日本でも人気の高いファッションブランド「ケイト・スペード」との期間限定カプセルコレクションを発表。アパレルや雑貨など約200アイテムを展開し、一部商品は数時間で完売するなど、大きな話題を呼んだ。
これらの他社ブランドとの協業が「手頃な価格でデザイン性の高い商品を提供する」というブランドイメージの確立に貢献しており、ウォルマート(Walmart)をはじめとした競合との差別化につながっている。
今後もこの路線は継続される見通しで、25年8月にスポーツブランド「チャンピオン」とのコラボコレクションを販売予定。下期には米眼鏡ブランド「ワービー・パーカー」とのコラボアイテムを米国内5店舗に導入する計画を発表している。
加えて、26年に「ワービー・パーカー」のショップ・イン・ショップの開設も予定しており、商品・売場の両面で協業を進めていく方針だ。
一方、大手美容専門店チェーン「アルタビューティー(Ulta Beauty)」のショップ・イン・ショップを展開する計画は想定どおりにはいかなかったようだ。20年から始まったこの協業では、
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