他のスーパーとは別物に進化!スゴいローカルスーパーの生存戦略とは

文:阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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他のSMとはまったくの“別物”へ進化する方法

 実際、「大手と同じ土俵で戦わない」ことで、力強い成長を続けるローカルスーパーはいくつも存在する。

 いずれも自社の提供価値を明らかにしたうえで、それを構成する自社の強みを明確化し、徹底的に磨いている企業だ。限られた経営資源を強みの強化に集中させるため、「やらないこと」を決めている点に注目したい。

 平均年商28億円の「クックマート」を東三河・浜松エリアで展開するクックマート(愛知県/白井健太郎社長)は、ポイントカードもチラシも行っていない。インストア加工に人時を集中させ、値ごろで販売することで、ほかでは得られない付加価値の高い商品を提供している。それが魅力となり、お客がお客を呼び込み、従業員がさらにお客に楽しんでもらおうと努力することで、同社が掲げる「地域の活気が集まる場所」が実現されている。そのための組織づくり、企業文化づくりにこそ独自のノウハウがあり、業界の注目を集めている。

クックマート
平均年商28億円を誇るクックマート。戦略としてやらないことを決め、強みを磨きぬくことで、お客の熱烈な支持を得ている。全方位型の「すべてのお客に嫌われない」店では熱烈なファンはつくれないという

 地盤とするエリアにこだわらず、有望なエリアに打って出ることで、急成長を遂げる企業もある。精肉テナント業を祖業とする強みを生かし、地盤の九州のみならず、関東、東海にSMを展開するフードウェイ(福岡県/後藤圭介社長)だ。人口が減り続けるローカルでは成長し続けることができないと考え、13年に関東進出、以来、ドミナント戦略にとらわれることなく、東海エリアにも出店を進めている。

 フードウェイは売上高構成比60%を誇る生鮮を圧倒的な強みにしている。それゆえ、広域から集客できる繁盛店戦略をとれるのだが、その生鮮各部門の強さをいっそう引き出すために、生鮮各事業部ごとに独立採算制を導入し、事業会社化を志向する。

 両社とも強みをいっそう磨く過程で、組織も企業文化も通常のSMとは“異質”の独自の進化を遂げている。この点についてクックマートの白井社長は「自社独自のコンセプトを見出し、自社の気質や体質に合うことをやれば、おのずと『ディファレントな存在』(=他のSMとは別物)になっていくだろう」と語っている。

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阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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