百貨店の好調続く、M&A増えるも再建型は消滅へ 「2024年アパレル業界大予想」
さらに増える中国人インバウンド客に依存
そしてデジタル騒動の末路
1ドル150円という円安により、外国人にとって「お買い物天国」と化した日本。だが本格的な「爆買い」は、中国人インバウンド客が本格的に復活してからだ。今、中国はフクシマの汚水問題や自国の消費を拡大する国潮ブームにより日本と距離を置いている。つまり今の百貨店の好況は、中国人の「爆買い」に頼ったものではないということなのだ。したがって、中国人観光客の第2波を産業界は期待しており、彼らこそ今から日本のアパレル産業に「神風」を吹かす消費者なのだ。これは、もう少し日中関係を見ておかないとどうなるかはわからない。
数年前から各社が強化してきた「デジタル」だが、一周回って痛い目にあってようやくアパレル各社もデジタルの恐ろしさを学んだことだと思う。デジタル導入で絶対にやってはならないのは「値切り」だ。デジタル導入費用の仕組みを解説すると、Sier (デジタルを導入する人)の単価と人数でデジタル導入費用が決まる。産業界は、我々コンサルやデジタル企業のフィーをいい加減な計算に基づくものだとか、人件費相当だとか勘違いをしていることが多いのだが、これがあやまりだ。例えば、5000万円のフィーがかかった場合、一人 100万円のSIerが50人必要になるわけだが、これを4000万円に「値切る」とどうなるか。10人分の人間がいなくなり、40人で50人分の仕事をしなければならなくなるか、一人単価200万円などのプロジェクトマネージャーができる高額な人間を100万円程度の人員に替えるなどして品質が一気に悪化するのだ。それでも、これまでは50人で働き、社内数字を調整して工数インプットすることでごまかしてきたのだが、それも最近は一切できなくなっている。
そもそも、デジタル・トランスフォーメーション(DX)というのは、「業務コンサル」と「デジタル導入」が一緒になったものだ。そのバランスはプロジェクトの性質によるが、例えばパッケージ導入になると「コンサル」の役割が非常に重要になる。なぜなら、パッケージというのは様々な企業に導入されてできあがった最大公約数的業務プロセスが前提になっており、個別の企業は独自のやり方をしており、そのままではパッケージに入らないからだ。したがって、何が正しいのか、どうすればよいのか、ということをしっかり考えた上でBPR (Business Process Re-engineering: 業務改革の意味)を最高効率で行えるスキルが必要になるのだ。
これを「デジタルとは関係ない」とうそぶき、コストを下げて省略すると悪夢のような底なし沼に入ってゆく。ベンダーは常に弱い立場だから、クライアントから強く言われれば聞かざるを得ない。そうして、一回のカスタマイズ(パッケージのパラメータを超えたシステム改修)を行えば、「あれも、これも必要」となり、最後にはシステムが思ったように動かない、ということになるのだ。こうならないためには、デジタルのカバー範囲をよく理解し、できることとできないことをしっかり理解しながら、業務に対する深い知識を持つコンサルはリード役に徹することが必要となる。
23年は、実際に痛い目にあった会社が慎重になってデジタル導入を進めてゆくことになるだろう。
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