オーケー、ロピアの主戦場にヤオコー、ベルクも!増殖ディスカウントSMの勝ち方とは
「ディスカウント」という新たなビジネスモデル
これまでも、食品小売業界では“安売り業態”に挑戦する動きがたびたび見られている。だが、それらの多くは、不採算店舗や減価償却が済んだ老朽化店舗を改装で転換したり、定年後に再雇用した従業員を配置して人件費コストを抑えるなどの工夫により運営されていた。
そうしたかつてのディスカウントフォーマットについて、日本リテイリングセンター取締役リサーチディレクターの渥美六雄氏は「(かつての食品小売のディスカウントは)一過性のローコスト施策にすぎず、将来的な成長や拡大にはつながりづらい」と指摘する。実際に、前述したディスカウントフォーマットのほとんどは長続きすることはなく、現在は閉鎖、あるいは店舗自体は残っているものの規模は縮小、出店は凍結状態であるケースが多い。
では、ディスカウントフォーマットを成功させるには何が必要なのか。
渥美氏は、日本のディスカウントフォーマットのほとんどは「ディスカウント」とはいえず、より踏み込んだ安さが必要である、と説く。仕入れ先からの協力や支援などではなく、生産技術の開発やサプライチェーンの変革といった、新しい仕組みづくりによって初めて実現する競合とは比較にならない「破格の安さ」こそ、本当の「ディスカウント」であるというのだ。
ディスカウントを実現するための組織づくりも重要だ。現実問題として、「安さ」の打ち出しを行っていくには、メーカーの協力も不可欠である。ある食品小売の経営幹部は、「ディスカウントフォーマットを新規で始めるのであれば、商品部を必ず分ける必要がある。できれば運営を別法人にすべきだ」と指摘する。
「ある商品を店舗で販売するとして、既存のSMフォーマットでは売価128円、新しいディスカウントフォーマットでは98円、といったような取り引きではメーカーの協力は得られない」(前出の経営幹部)
実際に、有力チェーンと呼ばれるSM企業は、新会社や新しい商品部を立ち上げ、ディスカウントに臨んでいる。たとえば、ヤオコーはディスカウントフォーマット展開に先立ち、新会社フーコット(埼玉県/新井紀明社長)を設立し、フーコット専用のプロセスセンターまで開設している。フーコットの店舗を見ても、ヤオコーPBの扱いはなく、総菜もフーコット独自の商品を販売するなど、既存の「ヤオコー」とはまったく異なる新たなビジネスモデルに挑戦していることがわかる。
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