「感性」領域に踏み込むAIが小売を変える!CEATEC 2023に見るデジタルの未来とは
「感性」「曖昧さ」にAIが踏み込み
ますます人がいらない時代に
SDGs対応はこれから企業にとって死活問題になる。そこで、いわゆるCo2排出量など有害物質の測定にAIを使ったソリューションもあった。しかし、よく聞いてみると、これはセンサーなどで計測しているのでなく、条件設定(使う原料、インダストリ、使用用途など)パラメータを打ち込めば、過去の実測値から算出される論理的有害物質の排出量がある係数で導きだされるというものだった。このように、インプット情報を入力し、プロセスとアウトプットを導きだす従来の手法をAIと呼ぶことに疑念が生じるものもあったが、実際に、あらゆるところにセンサーを置かねばアウトプットの実数値は計測できないだろう。このグリーン対応のシステムは中央に展示会場があり、複数のベンダーが自社の技術をみせていたが、どれも係数やカバレッジが違うだけで基本的な設計思想は同じである。
私が感銘を受けたのは、PDF形式のドキュメントなどを文書作成ソフトのように自由に書き換えることができるなど、小粒だがあると便利なものが多数展示されていたことだ。現実には、こういうところから企業のデジタル化は進んでゆくのだろう。PDFの書き換えや編集はこれまでもできたが、何が違うのかと聞けば、実際は、オリジナルPDFはベースとして残っており、その上にもう1階層のレイヤーを貼っているのだという。聞けば「なんだ、その程度か」となりそうだが、実際のPDFを編集するときの難しさは経験した人でなければわからないだろうから、こうしたソリューションはとてもよい。これからは、契約書などの法務書類はPDFで、サインはiPadのようなデバイスでデジタルサインが主流になるだろう(もうすでになりつつあるが)と思うし、例えば教育機関で配布されるペーパーに書き込みをいれたり図表をいれたりすることもデバイスに関わらず容易になる。
一方メタバースは、やはりゲームの拡張性にとどまり、オフィス需要やビジネス需要にまで展開しているものはなかった。
このように、これからのコンピューティングは人類の非連続な脳思考へ近づき、コンピュータと人間のやりとりが、より自然なコミュニケーションを前提とすることになり、精度を高めながら無駄を省きリソースの全体最適をしながら環境との共生を実現化してゆく方向に向かっているということを感じられた展示会だった。
ただ、一点苦言を呈していただくと、どれも想定内のものばかりで、目から鱗が落ちるほどの衝撃を受けた応用技術はみられなかった。やはりこれからは、これらの基礎技術の上に「感性」や「曖昧さ」という領域にコンピューティングが浸食し、企業の中から人員をどんどん減らしてゆくという傾向はもはやとめられないということは確信できた。私たちは、どれだけテクノロジーが進化しても揺るぎない倫理・提案・意思決定などを、より合理的に導く力を養わなければ国ごとのデジタルデバイドが拡大してゆき、国力に大きな差をつけることになるだろう。
なお、余談ながら、こうした世の中の大きなトレンドに対して何か私ができないかと考え、教育事業を自ら立上げることにした。すでに2年前に12人の若者(20〜30代)を一年間、徹底してトレーニングし大きな成果をあげることができたので、今年の12月より完全にバーチャネルな空間で「スーパーロジカルシンキング」という講座(これまでのロジカルシンキングを遙かに超えた合理性を導く頭の使い方)をネット上ではじめようと思っている。ご興味のあるかたは、私のホームページ(下記参照)よりお問い合わせいただきたい。
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プロフィール
株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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