アマゾン経済圏をさらに広げる、バイ・ウィズ・プライムに通信衛星サービス事業とは

文:鈴木 敏仁 (R2Link代表)
Pocket

アマゾンのアンディ・ジャシーCEOが株主宛の書簡(2022Letter to Shareholders)を4月にプレスリリースで公開した。ジェフ・ベゾスが上場後に毎年公開してきたもので、恒例行事となっている。昨年は何をしたか、いま何を重視しているか、これから何をしたいのか、といった企業戦略についての経営者の考えがわかるので、私にとっては非常に貴重な資料だ。

宇宙を舞うロケット
3000基を超える人工衛星網を使った高速インターネットサービスを提供するプロジェクト「クイパー(Kuiper)」

 ベゾスは文章を重視し、会議の前にアジェンダの骨子をアウトラインやパワーポイントではなく文章で説明することをルールとしてきた人で、この書簡も4万字を超える大作である。

 今回は大きく、①変革のヒストリー、②現在のリストラ、③働き方、④フルフィルメント、⑤AWS、⑥広告、⑦海外事業、⑧食品事業、⑨アマゾンビジネス、⑩ バイ・ウィズ・プライム(Buy with Prime)、⑪ ヘルスケア、⑫クイパー(Kuiper)、⑬人工知能、と13項目に分類できる。このうちの⑥まではすでに土台ができあがっている事業、⑦以降は今後注力したい投資対象で、本稿では新規投資対象の3つを取り上げてみたい。

注目すべき3つの新規事業

①アマゾンビジネス

 法人向けのアマゾンビジネスを開始したのは2015年で、翌年には登録会員数40万以上を獲得し年商は10億ドルを超えたと発表、そして今回の書簡には流通総額で350億ドル(5兆円弱)と記載されている。驚異的なスピードで成長していることになる。

 もちろんただビジネス用のページを開設しただけではない。法人需要に合わせたマーチャンダイジングを提供しているのみならず、法人が物資を調達するときに必要となる分析ツールや管理ツールなども、自社で開発してプログラムを公開している。きめ細かく対応しており、それゆえ業界評価も高いのである。

②バイ・ウィズ・プライム

 昨年開始した

続きを読むには…

この記事はDCSオンライン+会員限定です。
会員登録後、DCSオンライン+を契約いただくと読むことができます。

DCSオンライン+会員の方はログインしてから閲覧ください。

鈴木 敏仁 / R2Link 代表

在米30年以上、現在はロサンゼルス在住。1997年にアメリカでS.M.R., Inc設立、米国流通業界を軸としたコンテンツ作成ビジネスを開始。また企業が実施する米国流通研修の企画およびコーディネートも合わせてスタート。1998年にリテールウェブを開設。年間訪問店数はのべ600店舗超、現場検証に基づいた分析をモットーとする。

著書

『ソリューションを売れ!』(ニューフォーマット研究所)
『誰も書かなかったウォルマートの流通革命』(商業界)

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態