カインズのプロショップ「C’z PRO」、会員制による顧客接点とデジタル融合で差別化を図る
株式会社カインズ(埼玉県/高家正行社長)は、2020年8月に「C’z PRO 東名横浜店」を出店して、プロショップ事業に参入した。現在、首都圏に同業態店を3店舗展開している。競合他社からは遅れての事業参入だが、ホームセンター(HC)事業で培った、顧客接点とデジタル融合で差別化を図り、需要獲得をねらう。
2020年8月にプロ市場に参入
カインズが、プロユース需要を獲得するためにプロショップ事業を立ち上げ、1号店「C’z PRO 東名横浜店」(神奈川県横浜市瀬⾕区)を出店したのは、20年8月だ。
ちなみにブランド名の「C’z PRO」は、カインズ(CAINZ)を意味する「C’z 」と「Seeds(種)」を掛け合わせ、カインズが、プロのよりよいワークライフを実現するための「種」をまく意を込めている。また、CにはCAINZのほか、Creative(創造)、Community(コミュニティ)、Connected(つながる)という意味も込めている。いわゆるカインズプロといった、カインズのHC業態の派生型店舗ではなく、まったく新しい業態としてスタートしていること、また同社が強みとする北関東ではなく、首都圏に出店していることからも、同社の並々ならぬ意気込みが伝わってくる。
C’z PROが、他社のプロショップと一線を画すのは、会員制卸売業の形態をとっていることだ。この会員制卸売業による展開のメリットは、顧客をプロ職人に限定できること、駐車場のスペースの有効活用ができるほか、大店法に縛られずに新規出店することができることなどが挙げられる。
21年11月に2号店の「品川シーサイド店」(東京都品川区)をオープン。22年3月には3号店「杉並井草店」(東京都杉並区)と東京都内に出店した。23年1月現在、C’z PROは首都圏に3店舗を展開している。
お客さまに教えていただく
東名横浜店の出店から約2年半の間で、品揃え、接客技術のノウハウも、地道に培ってきた。
実際、新しい店舗ブランドでスタートし、HC業態とは異なる商品政策(MD)が求められていることを理解していても、文字どおり、考えるのとやるのとは大きく異なっていたようだ。
東名横浜店では、1年以上をかけて品揃えを研究し、大幅にリニューアルを行った。「お客さまの声を最後までよく聞く」ことを徹底した。品揃えの研究で、「講師」として「C’z PRO」を指導してきたのは会員だった。
「お客さまに教えていただきました」と新規事業部・プロ特化事業PJの久保秀予リーダーは語ってくれた。そして、次のようなエピソードも紹介した。
「お客さまから『ヘルメ』はどこにありますかと聞かれました。そこで、ヘルメット売場に案内したのですが、ヘルメとは、給水・給湯配管用の防食シール剤の『ヘルメシール』のことでした。HCでは聞いたことのない商品です。しかし、職人さんにとっては、建築現場で普通に使用する資材なのです」。
もちろん、ヘルメシール剤は販売していた。しかし、売場にない商品も出てきた。そうした商品は、徹底的に店頭化していった。新たに導入した商品の売場には「職人様の声にて導入しました」のPOPを設置してアピールする。
「要望に応えれば応えるほど、手応えを感じていきました」と久保氏は言う。
同時に、東名横浜店のオープン当時は、商品カテゴリーごとに棚割りを組んでいたが、業種ごとに売場を設けるようにした。そして、電材、管材、内装・リフォーム材を最重点カテゴリーとして位置づけ、品揃えと価格では競合店に負けない施策を進めた。
こうしたMDを進めてきたことで、取扱品目数は約5万SKUになった。リニューアルの結果、会員数も着実に伸び、それを受けて出店したのが、前述した品川シーサイド店と杉並井草店だ。