ついに首都圏初上陸!カインズの「Style Factory」はどのように進化したか?

高浦佑介 (ダイヤモンド・ホームセンター編集長)
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カインズ(埼玉県/高家正行社長)のDIY、ライフスタイル用品に特化した都市型小型フォーマット「Style Factory(スタイルファクトリー)」がいよいよ首都圏に上陸した。7月18日には「ららぽーと海老名店」(神奈川県海老名市)、8月1日には「みなとみらい東急スクエア店」(神奈川県横浜市)がそれぞれオープンした。カインズはどのような戦略で首都圏攻略をねらうのか。

Style Factory
首都圏に初上陸したカインズの「Style Factory海老名店」

1号店出店から3年を経て
首都圏初進出

 天井は黒、床と壁面はグレーをベースに、店内の照明は少し暗めに設定されている。什器や柱にはウッドとグリーンを効果的に使い、「おしゃれなインテリアショップ」のような空間を演出。お客の動線も曲線状に設定され、それに合わせて什器の配置も工夫している。

 ホームセンター(HC)の店舗では「非常識」とされていることが、海老名、みなとみらいの2店舗で行われていた。これがカインズの新しいスタイルファクトリーだ。

 スタイルファクトリーは、「毎日のくらしに自分らしさをプラスできるヒントが見つかる『ライフスタイルDIYショップ』」をコンセプトとした、カインズの都市型小型フォーマットである。

 20179月に実験店舗として「テラッセ納屋橋店」(愛知県名古屋市)を初出店。189月にはすぐ近くの「ららぽーと名古屋みなとアクルス店」に2号店をオープンした。

「お客さまのショートタイムショッピング、買い回りを優先したHCをメーンとしてきたカインズにとって、ゆっくり買物を楽しんでもらう売場づくりは慣れていない。名古屋で実験を繰り返し、レイアウトや動線づくりにこだわった」とカインズ高家正行社長は話す。

 実際、カインズのHC店舗と比べると、スタイルファクトリーの売場面積は10分の1前後で、ららぽーと海老名店が205坪、みなとみらい東急スクエア店が277坪。今後は、100坪、200坪、300坪タイプの店舗を開発していく方針だ。

 アイテム数も約10分の1に絞り込み、ららぽーと海老名店が約3600、みなとみらい東急スクエア店が約4000DIY、ライフスタイルに関連する商品に特化した商品政策(MD)を展開している。

特徴は売場のテーマ化

テーマ
スタイルファクトリーは「売場のテーマ化」が1つの特徴だ

 スタイルファクトリーの最大の特徴は、売場のテーマ化だ。ただカテゴリーごとに商品を陳列するのではなく、特定のテーマを設定し、提案型の売場づくりを行っている。

 ららぽーと海老名店では、5つのテーマを設けた。

 1つ目は「SMALL SPACE」。「自分らしさをもっと自由に。」をコンセプトに、限られたスペースを有効活用できるような収納機能を備えたインテリアグッズ中心に構成されている。

 2つ目は「&Pet」。ペットとの共生をテーマに、臭いや汚れに対応する機能性の高い商品を品揃えする。

 3つ目は「楽カジCLEAN」。掃除にかかわる時間、回数を30%削減することテーマに、利便性の高いグッズを揃える。

 4つ目は「楽カジLAUNDRY」。CLEANと同様、洗濯にかかわる時間、工程の30%削減をめざし、ランドリーの時短アイテムを提案する。

 5つ目は「楽カジKITCHEN」。調理の効率を上げる便利グッズを中心に売場を構成。調理にかかわる時間、スペースの30%削減をテーマとしている。

 これら5つのテーマに加えて、みなとみらい東急スクエア店では、寝具を中心に揃えた「快眠」、自宅で気軽にヨガを楽しめる「楽ヨガ」の2つをテーマ化している。

 また、これらの5つもしくは7つのテーマ化した売場のすべてに、DIYの要素を取り入れていることも特徴の1つだ。

PB比率を約7割に設定

 さらに、注目すべきは高いプライベートブランド(PB)比率だ。カインズのHC店舗でのPBの売上高構成比は約4割だが、ららぽーと海老名店、みなとみらい東急スクエア店では約7割に設定している。1号店のテラッセ納屋橋店の約3割と比べると極めて高い数字である。

 「PB比率を高めることを目的としているわけではないが、テーマに沿った生活者目線の商品を揃えていくとPBが中心になってくる」と吉井氏はPB比率を高く設定している理由を説明した。PBが約9割の楽カジCLEANなど、テーマによってはさらに高めている。

 実際に売場を見てみると、ナショナルブランドにはない、生活に便利なPBのアイデア商品が目立つ。たとえば、楽カジCLEANでは、底面で埃がとれ、歩くと床掃除ができるスリッパや、壁にかけることでカバーの付け外しが不要の粘着式クリーナーといった、掃除の時短に関連するアイデア商品を集めてテーマ化している。

 カインズはこの2店舗で様子を見たうえで、今後、東京都を含めた都市部にスタイルファクトリーを出店していく方針だ。スタイルファクトリー事業が軌道に乗れば、これまでHC企業が取り込めてこなかった都市部のニーズを取り込むことができる。カインズの成長をさらに飛躍させる可能性を秘めている。

記事執筆者

高浦佑介 / ダイヤモンド・ホームセンター編集長

2010年東京大学文学部卒業、12年同大学院修士課程(社会心理学)修了。14年ダイヤモンド・リテイルメディア入社。『ダイヤモンド・チェーンストア』誌の編集・記者を経て、19年4月より現職。

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