ECチャネルなど存在しない!「ECは常にポケットの中」の現実が招く悲劇

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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試着したブランドの商品を自社ECで買ってくれる」という幻想

monkeybusinessimages / iStock
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 当然、消費者は「リアル店舗」に行く時でさえ、「スマホ=EC」を携帯して入店する。また、自宅でも家族はスマホをいじってチャットを楽しんだり、密かなお買い物をしており、それは夜か昼かなど時間も関係ない。「EC in the pocket」というのはそういうことだ。つまり、今の消費者はECを携帯してリアルに入店するのである。そこには、同一テナント、同一ブランドによるチャネル連携という概念も存在しない。

  例えば、実際に触ったり見たりしないと不安な商品がメルカリで安く販売していたとする。サイズは一応、記載されていても、やはりファッションは着てみなければ雰囲気はわからない。その場合、消費者は正規品を売っているブランド店舗で試着し、鏡を見ながら自分のサイズや着てみた雰囲気を把握。その後、モール、メルカリやコメ兵などの二次流通で似た商品やサイズが適正な安価な商品を購買するのだ 

 OMO(オンラインとオフラインの融合)戦略を唱える企業が多い。それら企業は、ECを店舗に持ち込み、「店舗とECを融合させる」ところまでは理解していると思う。だが、実際の購買行動の段階において、「消費者が試着したブランド店舗で買うのは幻想だ」ということを理解しているだろうか。

 すでに前回報告した通り、いわゆる消費者同士の二次流通市場は2兆円に迫っており、うち約40%が衣料品であるという事実から、推定市場規模は8000億円ある。ただし、二次流通はディスカウントが常識だから、80%オフを割り返せば、流通量は正規上代ベースで約4兆円、つまり、今のアパレル市場規模の約半分に相当するマーケットが二次流通やC2C(個人間取引)で流通している。さらに、今後、SDGsの観点から新商品を作ることはますます難しくなり、デニムを中心に二次流通が急拡大している米国のような状況は日本でも進んでいくだろう。

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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