ECチャネルなど存在しない!「ECは常にポケットの中」の現実が招く悲劇
「試着したブランドの商品を自社ECで買ってくれる」という幻想
当然、消費者は「リアル店舗」に行く時でさえ、「スマホ=EC」を携帯して入店する。また、自宅でも家族はスマホをいじってチャットを楽しんだり、密かなお買い物をしており、それは夜か昼かなど時間も関係ない。「EC in the pocket」というのはそういうことだ。つまり、今の消費者はECを携帯してリアルに入店するのである。そこには、同一テナント、同一ブランドによるチャネル連携という概念も存在しない。
例えば、実際に触ったり見たりしないと不安な商品がメルカリで安く販売していたとする。サイズは一応、記載されていても、やはりファッションは着てみなければ雰囲気はわからない。その場合、消費者は正規品を売っているブランド店舗で試着し、鏡を見ながら自分のサイズや着てみた雰囲気を把握。その後、
OMO(オンラインとオフラインの融合)戦略を唱える企業が多い。それら企業は、ECを店舗に持ち込み、「店舗とECを融合させる」ところまでは理解していると思う。だが、実際の購買行動の段階において、「消費者が試着したブランド店舗で買うのは幻想だ」ということを理解しているだろうか。
すでに前回報告した通り、いわゆる消費者同士の二次流通市場は2兆円に迫っており、うち約40%が衣料品であるという事実から、推定市場規模は8000億円ある。ただし、二次流通はディスカウントが常識だから、80%オフを割り返せば、流通量は正規上代ベースで約4兆円、つまり、今のアパレル市場規模の約半分に相当するマーケットが二次流通やC2C(個人間取引)で流通している。さらに、今後、SDGsの観点から新商品を作ることはますます難しくなり、デニムを中心に二次流通が急拡大している米国のような状況は日本でも進んでいくだろう。
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