レシートは語る第5回 大手食品小売のアプリ利用率比較 最高はベイシア、メーン顧客8割が使用

山室 直経 (mitorizDMB本部 本部長)
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「店頭での告知」は効果あり
ベイシアの秘訣は「初回特典」

 次に、公式アプリを利用したきっかけについて聞くと、総合スーパーと食品スーパーの8社平均で、高い順に「店頭での告知(46.0%)」「ポイントカード連携(40.1%)」が4割を越え、その後「アプリ限定クーポン(24.7%)」「初回特典(21.8%)」「チラシ閲覧(19.2%)」が続いた(図表2)。

図表2
図表2 公式アプリを利用したきっかけ:複数回答、上位5位までを抜粋

 4割以上の利用者が回答した「店頭での告知」「ポイントカード連携」については、各社が開店時や週末などに実施している店頭での告知活動については、利用促進に効果を発揮していると言えそうだ。また、ポイントカードを財布に入れて持ち歩かなくて済むという要素は、アプリ利用の大きな理由の1つであると考えられる。

 チェーン別でみると、利用率が約8割に達している「ベイシア(ベイシアアプリ:20年12月リリース)」は、「初回特典(51.2%)」が平均よりも(29.4ポイント<pt>)と抜きんでているのが特徴だ。

 そこで過去の特典を調べると、アプリをダウンロードして会員登録するとアプリ上で200pt(1pt=1円として利用可)を、さらに指定期間中に買物をすると100ptをプレゼントするなど、顧客にとってメリットの大きい初回特典を提供するキャンペーンを積極的に実施しており、これがフックとなり利用者が増えていると考えらえる。

チラシ閲覧で得点付与
日常利用促す工夫が多数

 次に利用率の高かった「イトーヨーカドー(イトーヨーカドーアプリ:18年6月リニューアル)」は、「チラシを閲覧(3社平均:23.4%)」が他チェーンと比較して高い。チラシを閲覧するとセブン&アイ・ホールディングス(東京都)グループの「セブンマイル」が貯まるという施策を行っていることが要因の1つにありそうだ。

 同じく「チラシを閲覧」が8社平均より7.1ptも高いサミットでは、アプリ上であれば配布前日からチラシを閲覧できるほか、表示の拡大・縮小や、表面・裏面の切り替えが容易など、アプリ上でチラシが見やすいように工夫されている。これらの施策は、日常的なアプリ利用を促せるとともに、販促を紙のチラシからアプリ上へ移行するのに有効な施策と言える。

 さらに、食品スーパーで2番目に利用率の高い「マルエツ(マルエツチラシアプリ:21年2月リニューアル)は、「ポイントカード連携(51.0%)」が8社平均よりも10.9pt高い。提携する「Tポイント」がアプリ内で貯められとともに、毎日挑戦できるTポイントが貯まるゲームを提供している点などが高評価につながっていそうだ。

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記事執筆者

山室 直経 / mitoriz DMB本部 本部長

山室直経(やまむろ・なおつね)

神奈川大学経営工学科卒業。パソコンメーカーを経て、米リサーチ会社にてコンサルティング業務を学ぶ。その後、大手家電量販店子会社のパソコンメーカーで経営企画室に従事。計数管理とERP導入による業務改善などのプロジェクトを経験した後、2012年3月ソフトブレーン・フィールド入社、消費者購買データ事業の新規立ち上げを行う。

現在はデータを軸とした事業開発と当社の基幹システムのDX戦略を担う

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