アパレル全滅時代を救う 過剰在庫問題を解決する、シンプルかつ確実な方法とは

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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マクロ分析から個別企業の戦略を考えよ

このような考察をすすめてゆけば、アパレル産業における企業が取り得る戦略の概要が見えてくる。言うまでもなく、個別の企業はこうした経営環境をしっかり分析し、個社が取りうる戦略を明確にしてゆくべきだ。しかし、多くの企業の戦略と称するものは近視眼的なものばかりに見える

図表
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上図を見てもらいたい。これまでの話を現在のアパレル業界の状況として俯瞰してみたものだ。つまり、冒頭で説明したように、既にお腹が一杯になっている状況の中で、さらに、食べきれないほどのフルコースを運んでいる。これが、多くの企業がやっていることなのだ。

ポイント、値引きセール、催事、オフプライスストアなど、言葉は違えど、あの手この手で値引き合戦を繰り広げ、お腹がいっぱいの消費者に、さらに衣料品を詰めこもうとしている構造がおわかりだろうか。

おそろしいのは、コンサルタントや評論家と称する人達でさえ、こうしたマクロ的考察に視座が及ばず、「自社システムを入れろ、そうすれば在庫の問題は解決する」など、業界の構造的問題を掴んでいないことである。すくなくとも、こうした全体を俯瞰した視座で産業が持つ構造的問題に言及している人に出会ったことがない。せいぜい、念仏のように「リードタイムを短くしろ、そうすれば在庫はゼロになる」など、全く非論理的な主張がまかり通っている。

この課題解決は、実行するのは数多くの既得権益により極めて難しいが、進むべき方向性は極めてシンプルだ。

論理的にいって、すでに新規投入量の半分がいくら値引きをしても売れないのだから、投入量を半分にするしかない。しかし、さらに、賢明な読者であれば、「現在のプロパー消化率が50%程度だから、投入量を半分にしても単純にすべて売れるわけでない」ことを指摘するだろう。

これは、過剰投入が解消されることによるプロパー消化率向上が一定数があることから、仮にそれを20%(プロパー消化率は70%に上がる)とおき、現在の全投入量の70%削減を行う(投入量を30%にする)というのが私の提案である。

そうすれば、企業は否が応でも「売れ筋」しかつくらない、いや、つくれないようになるだろう。そして、残りの売上は、市場に余っているタンス在庫と隠し在庫を回流させる新たなビジネスを創り上げるように、産業政策で仕向けるわけだ。これが、問題解決の正しいアプローチである。

今、メディアではどこでも二次流通市場の拡大を報じている。もはや、二次流通市場は、私一人が騒いでいる夢物語でなく、真のサステナブル経済へ移行する上で極めて重要な産業政策の論点なのだ。いろいろな団体が設立しては消え、また、統合しているが、こうした全体像から政策立案を行っているのか、場合によっては公開ディベートをすべきだろう。どのような議論が繰り返されているか、ウエビナーで国民や産業界、メディアに晒し、本当に身のある議論がなされているかライブ公開もできる。

 それでは、日本に2万社弱ある日本のアパレル企業の投入量を減らすのか。読者はこのようなつっこみをするだろう。「どこかの数社が投入量を70%減らしても、競合がここぞとばかりに、そのセグメントに対して投入量を増やすだろう」と。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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