「大きなD2C」へ向かう未来のデジタル・アパレルの姿とは
サプライチェーンという概念が消える
![Teka77/istock](https://diamond-rm.net/wp-content/uploads/2021/08/iStock-1155466406.jpg)
今、ZARAを見ても、Sheinを見ても、世界の物流の主流は「クーリエ」だ。クーリエとは、ドア・トゥ・ドアサービスのことで、物流業者に渡せば世界の裏側まで48時間以内に運んでくれる。Sheinは、クーリエをつかって、中国広州から「個配」(個別配送)で、個人宅まで運ぶ。その結果、輸入関税が無税になることはすでに8月4日の論考で説明したとおりだ。
私は、15年前に全日空のシステム導入の仕事をした経験がある。
私は、米国に調査に行き、まずオフィスに国内部と海外部がわかれていないことに驚いた。当時、(そして今でも)多くの日本企業が物流は国内部と海外貿易部をわけていた。私は、米国担当者に、「なぜ、貿易部と国内部をわけていないのか」と聞いたところ返事は極めてシンプルなもので、「FedExに to NYと書けば、NYに運んでくれるし、to Japanと書けば、日本に持って行ってくれる。なぜ、わける必要があるのか」というものだった。これが、15年前の世界の常識だ。
翻って、日本のアパレルはどうだ。ようやく、商社外しが進み、ドロップシップ(日本で仕入を行うのでなく、海外で仕入れを行うことをいう)といって海外で貨物の仕入を行いだした。聞けば、その後、世界に輸出する拠点政策かと思いきや、「商社の連中に日本まで運ばせると、いくら抜かれるか分からないから海外で仕入れをする」というレベルである。
まだ、駆け出しのコンサルだったころ、アパレル以外のいろいろな産業改革の経験をした私は、その圧倒的な時間軸の差に驚きを禁じ得なかった。すくなくとも、この航空機の部品産業においては、サプライチェーンマネジメントという概念はない。FedExやDHLなど世界規模で国際物流を展開するクーリエ企業と、どれだけ有利な契約を結ぶかで一点単価あたりの物流費が決まるわけだ。
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