サステナブル・ファッションは救世主か?アパレル業界でトレーサビリティが進まない単純な理由
ユニクロが今Made in Tokyoを出す意味を考える
![サステナビリティをキーワードに商品開発を進めるユニクロ](https://diamond-rm.net/wp-content/uploads/2021/07/IMG_20200618_110504.jpg)
私は、政治問題を企業に押しつけるのは筋違いだと考えている。もちろん、企業が自らの判断で自身の政治的立ち位置を明確化することに異論を唱えるつもりはない。しかし、人権問題や政治問題は、まず国の判断でスタンスを明確化し、例えば、輸入時に工場の認証制度をつけ、暫定八条、特恵関税のような形で、輸入時の優遇税制を適応するのが妥当だと思う。実際、この環境省のホームページには、オーガニックテキスタイル世界基準(GOTS)の認証制度を推奨している。生産工程の認証制度は、世界のブランド企業もやっており、特に難しいことではない。
今、この外圧のため、綿花、とくにGOT基準のオーガニックコットンが異常高騰し、夏の定番である綿花の調達は困難になっている。お国は、この産業を潰すつもりなのか、あるいは、かなり穿った見方をすれば、すでに対応が遅れたSDGs対応のスケープゴードにアパレルをしているのではないかとも思う。
なにより、今後、こうした生産活動におけるトレーサビリティについて、企業は正確な遵守責任が問われる時代になった今、国の助けがなければ企業は安全な場所、つまり、国内に工場を持つ以外にないことは、日本のサプライチェーンのど真ん中で実務をやっていた私がよく分かっている。私は、ユニクロの Made in Tokyoはこうした圧力と無関係ではないのではないかと感じている。
なお、本稿執筆翌日の7月11日、日経新聞は「経済産業省と日本繊維産業連盟が指針をつくり、繊維製造の人権問題について官民が連携する」と報道した。
さて、本日は、流行の(あえて皮肉を込めて)サステナビリティについて、あえて炎上を承知で持論を展開させて頂いた。しかし、多くの人間が同じ方向を見始めた瞬間、私たちは危険な方向に進んできた歴史を忘れてはならない。本稿が、生産的な議論の一助になればという思いで、あえて書き綴った次第である。
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プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)
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