マッキンゼーが解説する「デジタル・アナリティクス」を活用した「品揃え」「価格」「販促」の最適化

解説・文=櫻井康彰・山川奈織美・平山智晴(McKinsey and Company パートナー)、澤木菜美子(McKinsey and Company マネジャー)
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顧客の理解を活かした打ち手へ

 今回は、第1回「日本食品小売の現在地と事業モデル変革の5つのポイント」でも挙げた「デジタル・アナリティクス」を活用した「品揃え」「価格」「販促」の最適化に関して論じる。あらゆる業界において、データ活用の重要性はかねてから指摘されているが、この課題は実店舗での購入が主となる食品小売業でも重要度が増している。

買物のイメージ
多くの国内食品小売業では「顧客データ」の活用は不十分である。 i-stock/recep-bg

 多くの国内食品小売業では、品揃え、価格、販促の意思決定が、売上点数などのデータ分析を基にしつつ、最終的にバイヤー・販促部隊などの「経験と勘(センス)」によってなされているのが現状だ。一方、「顧客データ」の活用については、必要性が叫ばれているものの不十分である。クローガー(Kroger)など海外小売企業は、顧客データを活用し、品揃え、価格、販促に活かすことで、現状より顧客ニーズの変化に迅速に対応するとともに、「個客」のニーズを踏まえた打ち手を実施し、その結果として粗利額の向上を実現している。

 「品揃え」に関して、多くの食品小売業では、バイヤーたちが「経験と勘」およびサプライヤーからの情報、ABC分析などの売上データ分析に基づき決定していることが多い。ABC分析によって品揃えを選別すると、ほかの競合店舗と変わらない品揃えになってしまい、その企業の「固定ファン」のニーズを取りこぼしてしまう可能性もある。商圏内の顧客像を明確にしたうえで、その顧客が好んで購入する商品(代替性の低い商品)を明らかにし、品揃えに反映させることで消費者からの支持をより高めることができるのだ。

 同様の事例は「価格」でもみられ、キーバリューアイテム(KVI)の選定もバイヤー・店長の「経験と勘」によって行われていることが少なくない。新型コロナウイルスの影響もあり、今後消費者の価格感度は高まることが予測されるが、無駄な値下げをすることは避けなければならない。価格感度の高い顧客セグメントを見つけ、その顧客が価格を意識する商品に絞り込んで値下げするという手法が有効である。自社の顧客のうち、特定の顧客セグメントで価格感度が高いものとして特定された商品は、必ずしも競合の売れ筋商品とは限らない。そのため、競合に気づかれることなく価格変更を通したアプローチを仕掛け、粗利で1%程度の効果を出すことが可能である。

 最後に「販促」に関しても、チラシの掲載商品や値引きの比率などは販促部や店長の「経験と勘」によって決定されている。この背景には、

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