マッキンゼーが解き明かすニッポン食品小売、現在地と変革5つのポイントとは?

解説・文=岩谷直幸(McKinsey and Company 日本代表 シニア・パートナー)、船石智彦(McKinsey and Company パートナー)、浜田圭(McKinsey and Company アソシエイト・パートナー)
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コロナ禍の業績回復は持続的ではない

 新型コロナウイルスの影響を受けた外食需要の落ち込みもあり、食品小売業の業績は回復傾向にある。2020年2月から21年1月にかけての1年間、食品スーパー(SM)の既存店売上高は前年を上回り続けてきた。同期間の食品小売業の株価上昇率はTOPIXを上回り、とくにイオン(千葉県/吉田昭夫社長)は60%超の上昇をみせた。他方で、米国・欧州・中国で顕著にみられる、急速な事業モデルの変革(デジタルトランスフォーメーション、ネットスーパー推進、新業態の開発)について、国内における進捗は大きく遅れている。

千葉市内のスーパーで買い物をする人
2020年5月28日に千葉市内で撮影。(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon/File Photo)

 このような環境変化のなか、国内SMの現在の業績回復が持続的なものであるかというと、必ずしもそうではない。足元の業績は回復基調だが、本質的なニーズ変化への対応は立ち遅れている。そして、人口減少に伴って日本の食料品消費は必ず減少する。消費者のニーズ変化に応えるため、変化対応のための投資実行原資を捻出するためにも、事業モデルの変革が必要だ。本連載では、合計4回にわたってマッキンゼーが持つ食品小売の「変革のレシピ」を紹介する。第1回では、日本の食品小売(SM・総合スーパー〈GMS〉)の現在地を確認し、レシピの頭出しを行いたい。

非効率の放置と業務変革の遅れ

 過去20年間にわたり、海外の主要食品小売が10兆円超の付加価値を生み出すなか、日本の食品小売は1兆円超の価値を毀損してきた

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