阪神大震災の教訓から、故中内功ダイエー会長兼社長が語った危機管理と商売のあり方とは

千田直哉
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阪神大震災を教訓に-大災害との共存

故中内功ダイエー会長兼社長

 こんな檄を飛ばし、入りたての社員まで鼓舞した中内さんの遺伝子はその後もしっかり受け継がれていたようで、そこから16年後の3月11日に起こった東日本大震災の際には、13日早朝から同社東北地方唯一の店舗であるダイエー仙台店(宮城県)は営業を再開させた。店頭には約3500人が列をつくった。本部から多くの社員が応援に駆け付けて商品を切らさないように努め、地元客からは称賛を浴びた。

 さて、阪神大震災との闘争と復興を経て、中内さんが到達した境地は大災害との共生だ。

 「この日本列島に住むかぎり、台風、地震、大火災、何時襲ってくるか誰もわからない。対策は共生しかない。共生とは馴れ合いではない。緊張した関係をもちつづけることである。ライオンとカモシカ。緊張した関係でアフリカのサバンナに共生している。大災害とわれわれも、この緊張関係が必要である」(中内さん)。

 大災害と共生するためには、自然をリスペクトする必要がある。どんなに緻密で頑丈な街、建物、施設、装置を整えたとしても、大災害はその上を行くものと考えるべきだ。それが自然へのリスペクトという意味である。

 1000年に一度といわれる東日本大震災のような大災害を当時は誰もが想定していなかったわけだが、実際に起こってみれば、その16年前の中内さんの言葉をなぜ、もっとちゃんと受け止められなかったのかという反省ばかりが残る。次に必ず起こるはずの震災対策として、今度こそ生かしていかなければならないと痛感させられる。

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