小売業は人のビジネス!従業員のやる気を引き出す=西友兼ウォルマートジャパンCEO 上垣内猛
米ウォルマート(Walmart)傘下の西友(東京都)は5月12日付で上垣内猛執行役員シニア・バイス・プレジデント(SVP)が最高経営責任者(CEO)に就任した。西友がウォルマートの完全子会社になってからのCEOは4人目。日本人は4年ぶり、2人目となる。上垣内CEOは西友の戦略をどう描くのか。
アソシエイトの会社への貢献意欲を高める
──5月12日付で西友とウォルマート・ジャパン・ホールディングスのCEO(最高経営責任者)に就任しました。CEO就任の打診はいつごろあったのですか。
上垣内 ゴールデンウィークが明けてから、ウォルマート国際事業部(Walmart International)から連絡がありました。打診があったときは光栄に思いました。また、経営の継続性の観点からも、それまでのマネジメントチームの一員がCEOに就いたほうがアソシエイト(従業員)にとっても励みになると考え、受諾することを決めました。ウォルマートのダグ・マクミロンCEOからは「頑張ってください」と激励の言葉をもらい、とても励みになりました。
──入社したのは3年前の2012年4月です。これまでどのようなことに力を注いできましたか。
上垣内 西友の中でもいちばんの大所帯である店舗運営本部を約3年間担当しました。
さまざまなことを手掛けた中で、いちばんよかったと自負できるのは従業員満足度(ES)調査の数値を大きく改善させたことです。
調査は会社への貢献意欲を測る項目もあり、店舗運営本部の担当になってから約1年半で数値を約10ポイント改善させることができました。アソシエイトの会社に対する貢献意欲はそれまで約50%でしたが、60%近くまで引き上げたことになります。
──具体的には、どのような方法で従業員の満足度を高めたのですか。
上垣内 可能な限り店舗を訪問し、店長をはじめとしたアソシエイトと話すことに専心しました。約2年半かけて348店舗すべてを回りました。
本部では、1週間のうち、週2日は外せない会議があり、店に行くことができる時間は限られています。日中の業務が終了した後や、土曜日や日曜日を利用し店舗を訪ね、アソシエイトと話す時間に充てました。
そこでは、店長ともよく話をしました。店長は、店の経営者ですから、経営に携わる同じ仲間として、どんな考えを持ち、何を課題として認識しているのかなどに興味もありました。
店長には、フランクに「何か本部ができることはありませんか?」「注目しているアソシエイトはいませんか?」と投げかけました。
店には、魚を切るのが上手いアソシエイト、若手で頑張っているアソシエイト、売場づくりが上手いベテラン、同じ売場で一緒に働いている親子など、さまざまなアソシエイトがいます。売場の善し悪しではなく、店長のリーダーシップとアソシエイトの将来について話すことに時間をかけました。
──ダグ・マクミロンCEOは「ピープルビジネス」という言葉を使っています。上垣内CEOもアソシエイトをとても大切にしているのですね。
上垣内 そうです。私は西友に入社するまで小売業の経験がありませんでした。西友は前職に比べ、従業員が多く、組織の規模もメーカーのそれとは異なります。小売業は人のビジネスであり、CEOである私の役割はアソシエイトのやる気を引き出すことだと考えています。
アソシエイトの満足度が上がらないと、お客さまを満足させることはできません。貢献意欲があまり高くないアソシエイトに接客をしっかりやろうと言っても、それは無理な話です。貢献意欲の高いアソシエイトは自分の役割を理解し、リーダーシップとやる気を持って仕事をしています。それは自分の会社に誇りを持っていないとできません。小売業とはそういうものだと考えています。