ライフスタイルは大きく変化、小売業もDXを進めなければ将来はない=リテール&ITリーダーシップフォーラム2020

2020/12/16 07:00
    ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局
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    日本小売業協会(東京都/野本弘文会長)は2020年11月17日、「リテール&ITリーダーシップフォーラム2020」を開催した。小売業やIT関連企業の講師、また学識者も加わり、海外におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の動向や日本での取り組み、成功事例などを紹介。デジタル技術を通じた業務やビジネスモデルの変革について必要性を訴えた。

    大きな波への対応迫られている

    、「リテール&ITリーダーシップフォーラム2020」の様子
    今回、いずれのプログラムも興味深い内容で、参加者は熱心に耳を傾けていた。経営環境が激変する時代にあり、小売業にとり有意義なフォーラムとなった。

     「リテール&ITリーダーシップフォーラム2020」の会場は帝国ホテル東京の本館2階「孔雀 西の間」。リアルでの参加者は定員枠いっぱいの175名、さらに今回はWEBでの受講者も700名超に上った。近年、話題になることが多いDXだが、あらためて関心の高さをうかがい知れた。

     日本小売業協会では、研究分野の取り組みとして2013年12月、大手小売業、I T ベンダー、団体をメンバーとする「CIO研究会」を立ち上げている。これまで流通業の企業経営に資するIT戦略やDXのあり方についてなどを主要なテーマとし活動してきた。

     06年からはCIO研究会が企画した「リテール&ITリーダーシップフォーラム」を隔年で開き、先進的なITを活用した新たな経営戦略構想と小売サービスを提案している。

     開会に先立ち、あいさつした日本小売業協会の野本会長は、「ウィズコロナ、アフターコロナを見据えるなか、人々のライフ・ワークスタイルは大きく変化し、小売業にも大きな影響を与えている。われわれはこの大きな波にDXで対応することが迫られている」と問題提起した。

     続いて壇上に立った、野村総合研究所主席研究員で日本小売業協会 CIO研究会 コーディネーターの藤野直明氏は、「日本のDXへの取り組みは世界的に見て後れを取っている」と指摘した後、次のように述べ、DXに対し行動すべきであると説いた。

     「最近、米国のビジネススクールの教壇に立つ、ITやオペレーションマネジメントの研究者と交流する機会があった。彼らが今、学生や経営トップに向け、力を入れて講義しているテーマは『DX or DIE』。つまり『DXを進めなければ将来はない』ということだ。今回のフォーラムをきっかけに、明日から自社でどう行動するかを考えてほしい」。

     さて、8回目となる今年のフォーラムは2部構成で、第1部のテーマは「小売・流通業の成功例を踏まえたDX戦略」。

    「リテール&ITリーダーシップフォーラム2020」第1部「講演1」の日本マイクロソフト執行役員 榊原彰氏
    第1部「講演1」の日本マイクロソフト執行役員 榊原彰氏

     「講演1」は、日本マイクロソフト執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント社長の榊原彰氏による「Enabling Intelligent Retail~ 小売業のデジタルトランスフォーメーションに向けたマイクロソフトの取り組み~」。

     「講演1」において、日本マイクロソフトの榊原氏は、最初に「31%」「400PB」という数値をスライドで示した。31%は、全世界のGDPの合計に占める小売業の比率、さらに400PB(ペタバイト)は、小売業から生じる1時間当たりのデータ量を意味している。これを踏まえ「世界的に見ると、小売業はすでに情報産業になっている」と現状を指摘した。

     この中で今後、小売業を発展させるために必要な要素を提示。具体的には①顧客を理解し、つながりを強化する②従業員の能力を強化する③サプライチェーンを高度化する④小売業ビジネスを再創造する──の4つを挙げた。

     DXに取り組む海外企業の成功事例も紹介。1つとして挙げたのは、アメリカで薬局チェーンを展開するウォルグリーンである。同社では、200万SKUの商品の取り扱いがあり、1日当たりの利用者は700万人にも上る。ここから生み出されるビッグデータを解析し、顧客の嗜好を把握するほか、効率的な在庫量も実現した。

     その結果、職場環境が改善、さらに従業員の能力も向上したことによって、Conversion Rate(顧客転換率)を15%、また顧客満足度も10%上げることに成功したというケースを写真やグラフを交えながら解説した。

    「リテール&ITリーダーシップフォーラム2020」第1部「講演1」の日本マイクロソフト執行役員 榊原彰氏

     「講演2」は、デロイト トーマツ コンサルティング執行役員の森正弥氏による「アフターコロナにおける顧客理解と販売のDX」。

     森氏は、まず「コロナ禍により自社がどのような影響を受けているかを把握することが大切」と述べた。その上で、消費者やマーケットの動きを見るに当たっては、①ニーズの変容②需要の急激な増減③デジタルシフトの3つが重要なキーワードになると語った。そのうえで、「HX(人間体験)」という概念を持ち込むことは、DX実現のために有効であると力説した。

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