「また会いたい!」とお客様が思う販売員を育てるために店長が伝えるべき「使命」

DIC幹部育成コンサルティング代表取締役 鳥越恒一
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新型コロナウイルスの影響で店舗に来店して買い物をする文化が大きく変わろうとしている。ECやオンライン接客に代表される非対面による買い物が今後主流になり、接客応対自体がないセルフ店舗や接客応対を行うロボットが多くの仕事を担うようになるだろう。しかし、そんな中でもお客様に必要とされる、愛されるお店は無くならない。お客様が求めているのは買い物で得られる商品だけではないからだ。そこには、親切に対応してくれる一流の販売員が必ずいるはずだ。今回はどうすればお客様に愛されるスタッフの育成ができるかについてお話しする。

Yagi-Studio/ iStock
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差別化ポイントは「人」

 これまで地域のお客様に選んで頂くためには近隣の競合店との勝負でした。しかしコロナ禍で一気に進んだ非対面により、競合店は近隣店だけではなくECや食品の宅配など一気に増えました。珍しい食品も海外から直接購入出来るようになり、生鮮品は食宅に、日用品はECサイトが競合となり、品揃え・鮮度・価格で勝負するのは大変困難な状況です。

 そんな中、地域のお客様に選んで頂くには専門知識やホスピタリティーに溢れたスタッフの存在に他なりません。しかしそんな人材が溢れているわけでもありません。そんな人材を採用できる幸運を待っていても仕方がないのです。人材は育てるものであるということを忘れてはいけません。未経験で入ってきた人を一流のスタッフに育てるのが店長の大きな使命なのです。

 お店は常に忙しく、日々業務に追われる店長には新人スタッフを懇切丁寧に指導する時間は多くないと思います。しかしこれからは考え方を少し変えてください。商品、品揃え、鮮度、価格での勝負は日に日に困難になってきます。そんな中で愛されるお店になるためには人の力が不可欠なのです。

「あのお店はとにかく親切で感じの良い店員さんがたくさんいて、気持ちがいい」「知識が豊富で買い物する際とても参考になる」「あの人に接客してほしい」「また会いたい」。こんな声に溢れているお店は地域のお客様に愛され、支持され続けます。店長はそんな人材を作っていかなければなりません。

 そこで大事なことは仕事=作業ではなく、仕事=使命(経営理念。お店の存在目的や価値基準)であるということをしっかりと教える事です。使命を果たす上で効率の良い作業や感じの良い接客が求められるのであり、作業をうまくこなすことが仕事のゴールでは無いことを伝えなければなりません。

 しかし、多くの現場では作業を教えることばかりに集中し、使命についてしっかり教育していないのが現実です。教えたい気持ちもあるのでしょうが、実際時間が取れないのでさらっと伝えるにとどまっているのでしょう。

 私は職業柄多くの現場スタッフに対し研修を行いますが、自社の使命を知らないスタッフがほとんどです。または聞いたことはあるけど普段は全く意識できていないのが実状です。現場で発生するお客様からの苦情は、使命を強く認識していれば起こり得なかった事ばかりなのです。

 無愛想な接客、お客様の通行を邪魔し続ける品出し、荒れた商品棚、チェック漏れによる傷んだ生鮮品など、これらは使命を理解していない現れではないでしょうか? 忙しい現場で教育時間を設けるのは困難な状況であると思いますが、これからはあらかじめ教育の仕組みを作り運用することにより時間を作ってください。

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